中央水研ニュースNo.29(平成14年7月発行)掲載

【情報の発信と交流】
研究室紹介-黒潮研究部海洋動態研究室
秋山 秀樹

 黒潮は世界で最も強力な暖流(西岸境界流)の一つで,膨大な水量と熱量等を熱帯域から日本の太平洋沿岸に運んでいる。黒潮研究部海洋動態研究室では,日本南岸の黒潮域および同内側域における水温・塩分や流れ等の物理的海洋環境に関する研究,またイワシ・アジ・サバ等の重要浮魚類の資源変動と海洋環境変動との関連に関する研究等を担当しています。本研究室で現在行っている主要な研究課題は以下の通りです。
 1)黒潮変動とそれに伴う内側域の海洋構造変動の実態把握(一般研究,平成13~17年度):黒潮域で多点水温連続観測を行い,衛星画像や調査船調査結果等との比較から,黒潮変動に伴う内側域の海洋構造変動パターンの時間-空間特性を捉えることを計画しています。同時に,最新鋭の調査船により黒潮の流量・流動構造の調査を行い,黒潮の変動特性の実態を把握し,上記時間変動特性との比較から,黒潮の流路変動のメカニズムの解明に取り組んでいます。また,資源・海洋合同調査船調査を行い,資源変動に係わる海洋環境の実態把握にも取り組んでいます。本研究の目標は,黒潮域において資源変動の要因となる海水温の時間-空間変動特性を明らかにし,小海区別の海洋構造変動の実態を把握すること,黒潮の流量・流動構造の長期変化を明らかにし,黒潮の流路変動との関連を把握することです。
 2)黒潮水域におけるリアルタイム海況モニタリング手法の開発(委託プロ研,平成13~15年度):黒潮水域における海洋構造とその変動特性の実態把握に関する技術の高度化を目的とし,リアルタイム海況モニタリング手法の開発に取り組んでいます。黒潮水域では国・独法人および各都県の水産試験研究機関が主体となって継続的に海洋環境調査を行っています。それらの海洋環境調査データを(準)リアルタイムで取得・整理し,海洋環境データベースの構築を行い,同水域における海洋環境図を作成します。そして,中央水研のホームページを通してWeb上で公開する予定です。また,黒潮水域における諸種の漁獲量データを収集し,海況モニタリング情報とリンクした漁況情報を提供する予定です。黒潮水域におけるリアルタイム海況モニタリング手法を開発すれば,黒潮の流路変動に伴う各都県地先海域の海洋構造の動的変化を予測することができ,中期・長期の海況予報の精度向上につながります。また,漁業現場へ迅速に情報伝達することが可能になります。
 3)九州南方から四国沖における黒潮・東シナ海混合水塊の分布と挙動(委託プロ研,平成14~18年度):東シナ海を産卵海域とする浮魚類の卵・仔稚魚が黒潮に取り込まれ輸送され太平洋側黒潮内側沿岸海域に加入する過程を,東シナ海陸棚縁辺域で黒潮水と東シナ海水の混合により形成される水塊の特性に着目し,九州南方から四国沖の黒潮とその内側沿岸海域において同様の特性を持った水塊の分布とその挙動について調べることにより明らかにします。九州南方から四国沖黒潮およびその内側沿岸海域における黒潮・東シナ海混合水塊の分布と挙動とその経年変動を明らかにすることにより,東シナ海を産卵海域とする浮魚類の卵・仔稚魚の輸送過程の解明と資源変動予測手法の開発に資することができます。
 4)黒潮変動を引き起こす外的要因とその動態の解明(日本学術振興会科学技術特別研究員,平成13~15年):科学技術特別研究員として瀬藤 聡氏を迎え,大気変動や気候変動に関連した黒潮の変動要因を検出し,その動態を明らかにすることを目的とした研究を行っています。また,各種の数値モデルや海面高度計データ等を活用して,黒潮流路変動と中規模渦との相互関係を調べるとともに,黒潮流路変動予測実験を試行しています。なお,本研究の概要は中央水研ニュース・研究情報(No.28,pp.10-13)に紹介されています。
 以上のように,黒潮研究部海洋動態研究室では,黒潮域における海洋環境の変動特性を把握するとともに,重要浮魚類の資源変動原因の解明や予測に役立つ海洋情報を検出することを目指しています。
 一方,これらの研究課題の他,漁海況予報事業の一環として中央ブロック都県の水産試験研究機関等と連携し,年3回(3,7,12月)「中央ブロック海況情報」を発表しています。中央ブロックは宮崎県から千葉県までと非常に広範囲に及ぶ上に,各小海区で海洋構造も異なり,かつ複雑で変動性に富んでいるため,上記の研究課題および海況予報業務を円滑に推進するためには,水産試験研究機関との連携・協力が必要不可欠です。また,依頼研究員制度や競争的研究資金の獲得等を利用して,「地域ニーズに基づいた海洋研究の活性化」を図りたいと考えております。今後ともご指導・ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。
(黒潮研究部海洋動態研究室長)

Hideki Akiyama
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