【研究調整】
平成13年度中央ブロック水産業関係試験研究推進会議部会報告
-海区水産業研究部会-
正木 康昭
平成13年12月14日,18機関32名の参加を得て,中央水産研究所において標記の会議が開催されました。今回の海区水産業研究部会は本年度2回目の会議となりました。平成13年7月4日に開催された第1回目の会議は,昨年度までの開催要領に従って平成12年度から準備されて開催されたものです。平成13年4月1日から発足した独立行政法人 水産総合研究センターが水産庁から受託した「水産研究総合委託事業」の実施要領第3の1及び水産業関係試験研究推進会議開催要領に基づき改めて標記会議を開催することになりました。その趣旨は,国及び他の公立試験研究機関等との情報交換を密にし,相互の連携強化を図ることにより水産施策の推進に必要な試験研究を推進するとともに,水産庁が定めた「水産研究・技術開発戦略」の進捗状況について評価を行い,今後の適切な試験研究の推進方針を検討するため,推進会議を開催することにあります。また,この推進会議には,個別の事項についてさらに具体的に検討するため推進部会を設置することができる,と定められております。このことにより,昨年度までの海区水産業研究部会を新たな推進会議の下部機構の一つとして再出発することになりました。推
進会議では,次の6つの事項を協議することが示されています。
1)「水産研究・技術開発戦略」の達成状況に関すること。
2)研究課題の重点化及びその内容に関すること。
3)研究推進体制に関すること。
4)研究成果に関すること。
5)研究シーズに関すること。
6)その他必要と認められる事項に関すること。
海区水産業研究部会では,以下の8議題について議論したのでその概要を報告します。
1.ブロック会議部会の開催趣旨について
配付資料に従って開催趣旨を説明した。その概要は,科学技術基本法,科学技術基本計画,水産基本政策大綱,農林水産研究基本目標,さらに「水産研究・技術開発戦略」の流れの中で研究成果等の評価を行いその達成度を検討すること等を目的として水産業関係試験研究推進会議が開催されるに至りました。これを実施するために,水産庁委託事業として水産研究総合対策事業があり,そこで「水産業関係試験研究推会議運営事業」が設けられ,その実施要領に基づき開催されるものです。水産総合研究センターには,6つの海区ブロック別水産業関係試験研究推進会議,6つの専門分野別水産業関係試験研究推進会議と全国水産業関係試験研究推会議が設けられ,その中の中央ブロック水産業関係試験研究推会議の下部機構として海区水産業研究部会が位置づけられています。以上の構成及び開催趣旨は概ね出席した構成機関の理解を得ることができました。
2.海区水産業研究部会の運営要領について
平成11年度に作成し承認を得ていた運営要領を新たな推進会議の目的に合致するように修正・追加した運営要領(案)を提示し,変更箇所を説明しました。持ち帰り,意見を海区水産業研究部に提出してもらい検討後,本年度の中央ブロック水産業関係試験研究推進会議に提案し,承認を得ることとしました。
3.ブロック構成機関及び中央水産研究所の試験研究内容とその結果について
事前提出された構成機関及び関係機関並びに中央水産研究所の試験研究内容及びその結果並びに平成14年度の計画を事務局(海区水産業研究部)で整理した資料に従って説明し検討しました。調査・研究・事業課題の数が多く十分な取りまとめと議論にはなりませんでした。次回以降,研究分野の対象(沿岸資源,資源培養,生態系など)を絞り込む必要ありとの意見もあり,議論の進め方について工夫の必要性が認識されました。
4.水産庁が作成した「水産研究・技術開発戦略」に関して,ブロック試験研究機関が実施した試験研究の到達状況等の整理について
研究と事業が混在し,その成果も,「水産研究・技術開発戦略」の8事項全てに跨っており,戦略目標項目別に事前に都県において分類していただく必要性が感じられ,次年度においては各都県であらかじめ仕分けをして提出していただくよう要請しました。当部会の主要対応事項Ⅱ・Ⅶでは,各項目で30課題前後の調査研究・事業が該当し,時間的制約もあり,十分な事前整理に至りませんでした。整理結果の分類に関しては,持ち帰り,修正し報告して頂くこととしました。いずれの事項に関しても設定目標に沿った課題も多く,今後の調査・研究の深化に期待が寄せられました。
5.ブロックにおける重点的に取り組むべき課題及び調査,試験研究等に関して連携・調整に関する事項について
「暖冬化の沿岸冬期漁業に与える影響について」(愛知県):海洋生産部とともに検討するとともに,とくに,新たな切り口で課題化の努力をする必要性が認められました。
「アコヤ貝の大量死対策」(愛媛県):病原体の特定は専門分野別推進会議で対応願うことになるが,強い貝の量産体制に関しては関係機関と連携・協力し確立を目指す必要があります。
「藻場造成対策研究」(鹿児島県):瀬戸内海区水研や水工研で着手しており,当該機関との連携をお願いしました。当部にこれらの問題に対応するための藻(草)類研究者の配置が望まれました。
「クルマエビ漁獲量減少の原因究明と,種苗放流及び資源動向についての検討」(愛知県):原因は多岐に亘ることが想定されますが,研究の必要性は認められました。専門分野推進会議と連携を持ち,全国レベルでの対応が望まれました。
「藻類研究の支援」(愛知県):当部においてもこれらの問題に対応するための専門家は不在であり,藻(草)類研究者の配置が望まれました。
「広域漁業調整委員会の太平洋南部会の資源回復計画候補魚種(広域資源)に関する資源評価の取り組み」(東京都):対応体制の構築が必要です。魚種等が決定された時点で中央水研内においても対応体制を検討することになります。部会としてブロックに係る事業,プロジェクト(研究)等を実現し,必要な研究費獲得のために十分な議論が必要であることが合意されました。
「沿岸域における環境の微細変化が生態系に与える影響」を中心的課題として,当部会構成機関が共同で予算化を目指してワーキンググループを設けて課題化に取り組むことにしました。
6.ブロックにおける調査研究を進めるにあたって水産庁等に対する要望事項について
「栽培漁業の事業効果及び遺伝的多様性に与える影響の研究実施」(鹿児島県):昨年度の海区水産業研究部会のミニシンポジウムで取り上げ,その課題を検討しました。社会・経済分野との連携が必須であり,引き続き研究の課題化を探っていきます。後者の課題については専門分野別推進会議の機関で既に取り組んでいます。
「アサリ稚貝の安定供給の開発に係る研究助成枠の新設」(愛知県):新たな切り口で課題化の努力をする必要性があるので次年度以降の部会で議論することになりました。
「イカナゴ資源管理に関する調査費の増額」(愛知県):必要性は理解されました。資源評価票作成に係わる業務を理解していただければ当該事業に組み込み,それなりの経費を考慮することは可能であり,実現に向けて要望県と海区水産業研究部との間でさらに議論を詰めていくこととしました。
「水産基盤整備直轄事業調査について」(愛知県):水研にもこのような状況に至る情報を流すよう努めてもらいたい。このような問題をブロックとして検討を行うことが部会の役割の一つでもある。意向は中央ブロック推進会議に報告することとしました。
7.「水産研究成果情報」課題について
6課題が提示されました。現在応募を募っているところであり,本年度は当部会で検討できませんが,全てが出そろった段階で皆様と個別に検討させていただき,候補課題を中央ブロック推進会議に提案することとしました。
8.その他
次年度の開催時期及び時間設定に関しては,漁業資源部会,海洋環境部会の開催時期を考慮して検討し,後日,構成機関,関係諸機関と相談して決めることとしました。
「アワビ研究会」は,平成14年3月上旬に開催する。幹事県である神奈川県と大分県と相談し具体化を図り,構成機関及び関係諸機関に連絡することとしました。
(海区水産業研究部長)
nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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