内水面利用部では,平成13年9月2日(日)に一般公開を行いました。昨年まで上田庁舎一般公開として平
成8年度以降5回にわたり一般公開を開催していましたが,本年は独立行政法人として初めての開催となりま
した。独立行政法人水産総合研究センターとして研究成果とその効果を広く普及していくためには,一般公
開が重要な機会となります。そこで内水面利用部では,これまでに我々が取り組んできた研究成果の講演を
主要な企画としました。そのテーマを近年問題視されている「生物の人為的移動」に焦点を絞り,準備を行
いました。例年通り,魚の確保,水槽設置,会場設営および研究紹介パネルの作成を職員が手分けして一般
公開の前々日までに行い,当日を迎えました。
本年度は,「人の手により移動した魚たち」をテーマタイトルに,以下の内容で一般公開を行いました。
- 一般講演「人の手により移動した魚たち」
- ①北アメリカ生まれの肉食魚ブラックバス
- ②メダカをふやそうの落とし穴
- ③まぎれこんだ魚?タイリクバラタナゴ
- その他
- 1.魚類の展示
- 2.生物による水質判定法(千曲川上流研究事例)
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淡水魚の水槽展示は例年最も人気の高い企画であり,本年も約30種類の魚等を集め,ミニ水族館を作成し
ました(図1)。本年はテーマに従い,オオクチバス,コクチバス,タイリクバラタナゴ,アメリカザリガニ
等の外来種も展示しました。「たくさんの魚を見ることが出来て楽しかった」「興味のあることを教えても
らえて嬉しかった」等の子供達の意見や「アユなどの魚の習性を教えてもらえて勉強になった」等の意見が
あり,例年同様,水槽展示は大成功に終わりました。
講演会では,午前に淀 太我科学技術特別研究員による「北アメリカ生まれの肉食魚ブラックバス」と井
口惠一朗主任研究官による「メダカをふやそうの落とし穴」,午後に清水昭男室長による「まぎれこんだ魚
?タイリクバラタナゴ」という演題で,本年のテーマに沿った内容で平易に講演していただきました
(図2)。
「非常にわかりやすく,興味がもてた」「色々知らなかったことがあったので,もっとPRすべき」「人間
の利便性だけで物事を進めると生態系が変わってしまう」等の感想が得られました。また,ローカルテレビ
局による講演の撮影が当日行われ,今後放送される予定になっています。
さらに,地域に密着した研究の一つとして,内水面利用部の脇を流れる千曲川の研究についてもパネルや
標本等を用いて紹介しました(図3)。護岸改修による生態系の変化や昔の河川の復活に興味を持たれてい
る方々からは「興味深い内容なので学校等へ講師を派遣したらどうだろうか」との意見がありました。
当日は天候に恵まれましたが,来場者数は昨年度を下回りました。来場者の内訳は20歳以下が40%,30代
,40代,50代各々が15%程度となりました。本年度は,魚すくいといった子供向けの企画を行わなかったた
め,昨年度の主要な来場者であった小学生以下の人数が減少し,それに伴いその父兄の人数も減少したため
と考えられます。来場者の大部分は主要な企画とした講演中に来場していたことから,今回の講演に対する
期待は大きかったと考えられます。実際,例年人気の高い魚類の展示とほぼ同程度の70%の来場者が講演に
対し「興味を持った」と回答しました。来場者の半数が一般公開を知人の紹介により知ったとの回答があり
,新聞やポスターから知ったのは各々20%程度でした。これらの事実は,我々の企画が来場者には満足して
もらえたものの,広報が上手くいっていなかったことを示していると考えられ,来年度に向けて広報手段を
考え直す必要があります。
来場者の大部分が一般公開に良いイメージを持った感想をアンケートに記入していましたが,「小学生レ
ベルの資料が欲しい」といった意見も見受けられました。今回の一般公開で全般的に言えることですが,学
童向けの企画になっていなかったものと考えられます。来年度以降,この様な意見や来場者数の減少理由を
参考に,より多くの人達に来てもらい我々の研究成果を知っていただけるよう,一般公開をより良くしてい
きたいと思います。
(内水面利用部漁場環境研究室研究員)
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