中央水研ニュースNo.26(2001(H13).7発行)掲載

【研究情報】
援助と成功
Juanito Carisma Dasilao, Jr.

 私は受入機関である高知県高知市にある中央水産研究所黒潮研究部での1年半の滞在について述べて みたいと思います。この研究所は優れた研究施設を備えており,有能な研究者と支援職員がいて,それ ぞれの専門分野を通じて水産研究を支えています。最初の頃,私は熟練した研究者とともに研究する上 で,自身の研究の力量と習熟の能力に対して疑問と不安の入り交じったものを感じていました。以前日 本に滞在した際,日本人の仕事の習慣と様式を知る機会がありましたが,日本人は仕事に対して勤勉で 時間厳守だと思いました。私の研究が円滑に行えたのは受入研究者の石田氏の親切と英語力,魚類生態 学の専門知識のお陰です。見たところ上司から部下に至るまでいつも楽しい雰囲気です。私は自分が本 当にどのように思われているか分かりませんが,いつも一緒に研究しているという一体感を感じ,嬉し く思います。このことは私と黒潮研究部の研究員との関係を強固なものとし,研究環境をより良いもの にしてくれます。
 言語と文化の違いは,同僚と良い関係を持ちそれを発展させるために最善を尽す事への障害にはなり ませんでした。礼儀正しさはみんなとの友好を得る良い手段ですし,自分がだれにでも与えなければな らない最も価値のあるものであると考えています。私は自分が幾つかの専門的な誤りや失敗を犯した事 があっても,それを修正する過程を通じて責任感が強まったと信じます。幸運にもこれらのことは皆私 の知識を広め,サギフエとトビウオの学術論文を執筆する機会をもたらしてくれました。
 また,24日間の開洋丸乗船によって私の研究者としての知識が増しました。日程は厳しかったので すが,様々な海洋学と生物学の調査手法を学ぶ機会が得られました。最新の機器を実際に操作すること は,帰国後にも大変な自信となりました。
 うまくいけばこの研究室での私の残りの月々が一層生産的なものとなるでしょう。なぜなら今や周囲 の人々や環境と設備についてよく知っているからです。調整期間は既に過ぎましたが,さらに挑戦し, 己を励し,遂行する中で実りが得られるだろうという希望を持っています。今日なされたことはすべて 将来に備えての練習であり学習となるでしょう。
 STAフェローとしての滞在中に,個人的には二人の子供が日本を訪れ,妻が高知大学で高等教育を継 続することもできました。子供達の幼い心に対し,日本の美しい自然を見せることが出来ました。子供 達は日本の友達に会い日本の人々の親切なもてなしを受けることが出来ました。子供達は異なる料理や 和食の味を探求し,そして,両文化の違いを実感しました。家族にとって日本を訪れることは自信を深 める夢の素晴らしい実現でもあります。
 私は文部科学省と科学技術国際交流センターの価値のある資金援助に深い感謝を抱いています。この 様な援助は私を支援し,研究をより効果的に行うことが出来ました。私の研究を受け入れてくれた黒潮 研究部と,私の滞在を大変実りあるものとしてくれたすべての研究室と職員各位と,サギフエの資料を 提供してくれた資源生態研究室の阪地,本多,梨田の各氏に,また,一緒に研究している資源評価研究 室の三谷室長と石田,上原の各氏に,さらに,乗船中に大変お世話になった開洋丸船長以下乗組員の方 々に,そして,数え切れないほど世話になった名前を挙げなかったすべての人々に,大変感謝していま す。(訳:黒潮研究部資源評価研究室 石田 実 主任研究官)

(黒潮研究部 STAフェローシップ研究員)


筆者と表中層トロールで採集したカマスサワラ。平成13年5月,開洋丸。


Juanito Carisma Dasilao, Jr.
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