中央水研ニュースNo.26(2001(H13).7発行)掲載
【独法化を迎えて】 独立行政法人水産総合研究センターの発足に当たって
畑中 寛
21世紀の幕が開きましたが、前世紀は戦争の世紀、経済成長の世紀あるいは 地球環境に大きな負荷を与えた世紀といわれております。特に、最後の10年間は科学技術の進歩が急 速であり、それに引きずられる形で社会構造や社会システムが急激に変化し始めました。 そして21世紀を表すものとして、IT革命、教育改革、かつて経験したことのない少子高齢化、ゲノ ム解析による医療革命、環境との共生、など変革を表す様々なキーワードが並んでおります。また、私 達の身近なところでも、中央省庁の統合、公務員制度の改革、水産基本法の制定、独立行政法人化、第 2次科学技術基本計画等、かつてない大きな変革がなされつつあります。まさに、今世紀は変革での幕 開けとなりました。 このような中で、私どもは本年4月1日より独立行政法人水産総合研究センターとしてスタートを切 りました。水産講習所試験部の設立から数えると国の試験研究機関として約100年を経過して21世 紀の幕開けとともに、全水産庁研究所が統合し、780名余の職員と10隻の調査船を擁する世界でも 有数の水産研究機関として出発いたします。水産庁から離れて,自立的運営をすることになりますが、 我々の使命、任務は基本的には変わらず、近年の行政施策の方向及び水産業の現状を踏まえるなら、益 々その役割が重要となっております。 独立行政法人の仕組みを簡潔に述べるとすれば、国が実施すべき事業であって、これを効率的、効果 的に行わしめるために設立されるものであり、国の予算において所要の財源措置を講ずることとされて おります。そして、大臣が示す中期目標の下で法人は中期計画を立てて承認を受け、それに沿って業務 を実施することになります。さらに、独立という名の示すとおり、大きな裁量権の下に自立的運営を行 うことがこれまでとは実質的に大きく異なる点であり、様々な運営面の工夫を取り入れることが可能と なりました。また今後は、積極的な情報公開と説明責任が求められ、成果や業務の効率化について今ま で以上に厳しい内部・外部の評価を受けることになります。 平成13年から5カ年にわたる第1期の中期目標の中で、「水産資源の持続的利用のための調査研究 の高度化」を初めとする6項目の重点研究領域が示され、同時に業務運営の効率化、競争的研究環境の 醸成、経費の削減等が示されました。当法人はこれを具体化する中期計画を練り上げ、承認を得たとこ ろです。また、水産庁及び農林水産技術会議事務局等のご支援の下に昨年より要求して参りました当法人の初年 度である平成13年度予算も確保されました。 中央水産研究所は、これまで持っていた水産研究所間の調整機能や会計機関としての機能を法人本部 に委ね、9研究部と2隻の調査船及び企画連絡室と総務課の体制となります。研究機能は従来と基本的 に変わらず、また中央ブロック推進会議、内水面及び利用加工関係推進会議を引き続き行うことになり ます。そして、新しい法人の仕組みの中でこれまで以上の成果を生み出すことが期待されています。 私達は、これまでの体質を脱し、独立行政法人の利点を最大限に生かした運営を行うことになります 。自ら業務運営の効率化と透明化に努め、研究現場における競争的環境を醸成し、機能の低下を来すこ とのないよう本部・研究所が一丸となって努力しなければなりません。今後とも、行政と密接な連携を 保ちながら、また都道府県の研究機関、他の法人、団体等との連携、協力関係を大切にし、水産業の維 持発展に寄与したいと願っております。 (所 長)
Hiroshi Hatanaka |