中央水研ニュースNo.25(2000(H12).12発行)掲載
【研究情報】
まぐろ計量経済モデル開発の現状
多田 稔
経営経済部において、まぐろを対象とした計量経済モデルの開発を2年前から開始した。水産物消
費の場が家庭内の調理から外食や調理済食品の購入にシフトしていることを反映し、総量としての需
給バランスを分析するために、まず需要モデルの開発から着手した。国産の漁獲量や輸入量から推定
される消費量のデータは上昇傾向を示すが、それが供給量の増加と価格下落によって生じたものか、
それとも所得や嗜好の変化によって需要が増加し価格の上昇と供給の増加を誘発させたものか不明で
ある。実際のケースではその両者が混在しているため、消費量の変化を所得要因と価格要因に分解す
る需要関数分析が必要となる。
クロマグロ、メバチ、キハダ、ビンナガ等を集計したまぐろ類の消費量を算出し、需要関数分析を
行なった結果、家計消費支出の変化率に対する需要の変化率を示す支出弾力性は0.57であり、そ
の値は年々低下するという結果を得た。この傾向を将来に延長すると、価格一定の下で家計消費支出
が年率1%で伸びれば、需要量は現在の約55万トンから20年後には約59万トンに増加するため
、4万トンの追加供給がなければ価格が上昇すると見込まれる。
このように、需要分析のみでは一定の供給量に対する価格変化の方向を定性的にしか予測できない
ため、次のステップとして内外市場を貿易によって結合したモデル化を行ない、漁獲量や為替レート
の変動に応じた価格の動向を定量的に分析できるようにした。まぐろという同一の原料を刺身市場と
缶詰市場に対して両市場間の価格差を指標としながら供給し、それによって再び価格差が再調整され
るというモデルになっており、そのフローチャートを下図に示している。
このモデルでは漁獲量が所与となっているため、世界的な漁獲量制限と価格の関係をシミュレート
することができる。ただし、まぐろは種類別に系群に分かれるため、世界計の漁獲量を海域ごとに分
割したモデルにするほうが望ましい。
最後に、下図モデルにおいて所与とされている漁獲量を、漁船トン数等の漁獲努力量や過去の漁獲
量によって説明するように試みている。現段階ではFAO統計の61海域と71海域における日本の
近海延縄による漁獲量を延縄漁船トン数と資源量に影響する主要因の一つである過去の漁獲量によっ
て説明する方程式を得ている。これによると、
ln Y = 0.36 ln K + 0.62 ln X + Const.
R2 = 0.94 [計測期間=1980年~98年]
Y=日本の近海延縄によるまぐろ漁獲量
K=日本の近海延縄漁船総トン数
X=まぐろ漁獲量(各国計)の過去3~8年の累積値
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である。ただし、これを魚種別に計測すると係数が不安定化するため、個々の魚種に関する漁獲量の
決定に当たっては上記の要因以外に海洋自然環境要因が強い影響を持っていると推察される。
今後のモデルの発展に成功すると、上記の漁獲量決定方程式を各海域毎に設定することが可能にな
り、各海域における漁獲が将来の他の海域における漁獲にどの程度の影響を及ぼすかというシミュレ
ーションを行なうことも夢物語ではないと考えられるため、資源分野や海洋分野の研究者のご協力を
お願いしたい。
(経営経済部比較経済研究室長)

まぐろ計量経済モデルのフローチャート
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Minoru Tada
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