上田庁舎では平成12年8月27日(日)に一般公開が行われました。上田庁舎の一般公
開は、研究所の存在と研究内容を近隣の方々に少しでも知ってもらことを目的として平成8
年度に54年ぶりに再開されました。以来毎年開催されており、今年は再開後5回目となり
ます。回を増す毎に公開に向けた準備には慣れ、水槽の設置、魚の確保、会場設営などは手
際よくなされましたが、職員全員でも11名のみの庁舎ということで、それぞれが決められ
た配置につくとパネルや魚の説明をする人がいなくなるという状況でした。そこで、横浜庁
舎から助っ人を2名お願いし、普段研究所にアルバイトに来ている方にもボランティアでお
手伝いをしていただくことで何とか公開当日を迎えました。
今年は「ミクロの世界と水産研究」をメインテーマに、以下の内容で公開を行いました。
- 1.淡水魚の展示
- 千曲川の魚、外来魚(オオクチバス、コクチバス、ブルーギルなど)
- 2.講演会
- 「川の微小ソウ類」
- 「遺伝子を使って分かること」
- 3.研究内容の紹介
- ・パネル展示
- ・研究室毎のテーマ展示
- 魚類生態研究室・・・・水生昆虫の観察
- 漁場環境研究室・・・・組織標本の顕微鏡観察
- 漁場管理研究室・・・・藻類の顕微鏡観察
- 4.魚すくい(キンギョ、メダカ)
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淡水魚の水槽展示は例年最も人気の高いコーナーで、今年も約30種類の魚を集めてミニ水
族館を作りました(写真1)。アンケートの結果をみても、大人から子どもまで広範囲に60
%以上の方から面白かったとの回答をいただきました。最近少なくなってきたカジカやアカザ
を見て、60代以上の方からは「この辺にも自分が子どもの頃にはいくらでもいたのに。」「
なつかしい。」などの感想が聞かれました。講演会では、阿部信一郎研究員に「川の微小ソウ
類」について、青沼佳方研究員に「遺伝子を使って分かること」と題して、今年のテーマに沿
った内容で分かりやすく話していただきました(写真2)。ただ、遺伝子となるとどんなに簡
単に説明してもさすがに子どもには難しい内容のようでしたが、大人の方の中には「講演内容
が非常に興味深かった。」との感想がありました。研究室毎の展示でも今年のテーマに沿って
ミクロの世界に触れてもらいました(写真3)。
普段、顕微鏡を見る機会がほとんどないため
か、このコーナーは魚の展示に次いで多くの方の興味を引いたようでした。「ソウ類の美しい
模様に魅了された。」などのうれしい感想もありました。また、今年は新たな試みで魚すくい
コーナーを設けました(写真4)。このコーナーは子ども達に非常に人気があり、多くの子ど
もやその父兄の方が捕まえたキンギョやメダカの飼育や繁殖方法を聞いていました。
当日は天候に恵まれ、昨年度の一般公開を上回る200人を越す来場者がありました。内訳
は小学生以下が約40%と最も多く、次いでその子ども達の父兄の年代に当たる40才代が2
0%、30才代と60才以上が同数で13%、50代が9%、20代が6%という順でした。
例年、中・高校生から20代の来訪が少なく、今年も合わせて15人という結果でした。今後
、このような若者世代にも足を運んでもらえるような斬新な企画を考えていく必要があります
。一人でみえられた60代以上の方からは、「毎年楽しみにしているので、これからも続けて
下さい。」との励ましの言葉をいただきました。回収したアンケートの集計によると、一般公
開のことを知ったのは新聞でという方が79人と最も多く、次いで家族や友達からが64人、
テレビが15人、ポスターが12人という結果でした。驚いたことに、学校の先生から聞いた
と回答した小学生は2人しかいませんでした。上田市内全ての小・中・高等学校に開催通知と
ポスターを送付したのですが、先生から生徒への伝達が思ったほどうまくいっていなかったよ
うです。理科離れが憂慮されるこの頃、次代の科学の担い手となる小・中学生に少しでも生き
物に触れてもらい、生物やそれを取り巻く自然環境を理解してもらうことは、私たちの使命の
一つではないかと考えます。これを反省材料として、来年度は学校への広報のやり方を考え直
す必要があるでしょう。
アンケートに感想等を記述した人の9割近くが、一般公開によいイメージを持った内容の感
想でしたが、「水質に関する展示をもっと多く。」「展示物の展開の仕方に工夫を。」などの
建設的な意見や、「見学場所が狭い。」「何を研究する場所なのか分からない。」など批判的
な感想もいくつかありました。今後はこれらの意見を参考にして、より多くの人に来てもらい
私たちの研究活動を知っていただける一般公開にして行きたいと思います。
(内水面利用部漁場環境研究室主任研究官・魚類生態研究室長)