中央水研ニュースNo.23(1999(H12).1発行)掲載

【研修と指導】
沿岸定線データの品質検査ブログラム及び海洋観測データのFRESCOへの登録プログラム研修会報告
友定 彰

 昭和38年に我が国沿岸をおそった異常冷水によって各地で磯魚や沿岸魚類の大規模な集団死亡が発生 した(農林水産技術会議事務局,1969、伊東・友定.1985など)。この異常冷水を契機として、 水産庁は昭和39年に漁海況予報事業を発足させ、海に面した地方自治体が沿岸定線観測を開始した。沿 岸定線観測は各自治体の水産試験場等が20~30の定点を設けて、毎月1回水温と塩分を測定するもの で、現在まで継続されている。これらの観測結果は海区水産研究所に集められ、水産研究所が行った海洋 観測結果と併せて中央水産研究所がまとめて海洋観測資料集を年報として、以前は印刷物で、現在はカタ ログと磁気媒体で刊行している。資料集を作るまでには様々な作業が伴うので、観測値や位置の転記ミス 、入カミス等があり、データチェックの必要性が以前から指摘されていた。また、近年、海洋観測技術も 向上し、CTD等の測器によって膨大な量のデータが得られるようになった。それに対して、海洋観測資 料刊行委員会は従来通りいわゆる所定層のデータを収集している。刊行委員会といっても、実質は海洋生 産部変動機構研究室の研究者がその任に当たっていて研究のかたわらにデータ集を作成しているので、以 前の所定層データの編集でも大変な作業であったが、それにもまして、近年の膨大なデータに対処するこ とが困難な状況になっている。水産庁資源生産推進部沿岸資源班が「我が国周辺漁業資源調査」で漁業情 報サービスセンター(JAFlC)ヘの委託として海洋観測データ流通システム(FRESCO2)を構 築することになり、このシステムでCTD等のデータを流通させる方向でシステムが作られつつある。
 1997年4月に海上保安庁水路部の外郭団体として海洋情報研究センター(MlRC)が設立された 。MlRCは日本海洋データセンター(JODC)に集まるデータの品質検査、有効利用のために、種々 のソフトを開発している。その中の一つとして、水産庁所定層データのデータチェックソフトを作成した 。7月17日午前、MlRCにおいてデータチェックソフトの研修会を開催した。参加者は東海ブロック の水産試験場等と中央水研の担当者で、実際にソフトを走らせて、データチェックのやり方を習得した。 このソフトは色彩も美しく、操作も簡単で、データ修正も簡単に行うことができる。参加した各機関には 、1枚ずつCDに収録されたソフトが提供された。本ソフトで既にデータチェックを行っている機関もあ ると聞いている。同日午後にJAFICでFRESCO2の操作方法の講習を受けた。参加者は中央ブロ ックの都県水産試験場等と中央水研の担当者とMIRCの職員2名(傍聴)であった。FRESCO2は 1998年1O月に運用を開始すべくソフトの改良を行っているとの説明があり、改良前のソフトを実際 に動かして、データの流れ等についてのイメージを得ることができた。本システムの問題点は「我が国周 辺漁業資源調査」に参加していない遠洋水産研究所や水産試験場とその分場に端末が設置されていないた めに、これらの機関からは本システムにアクセス出来なということである。従来の海洋観測資料には当然 これらの機関のデータが含まれていた。
 最近では、水産資源の長期変化や魚種交代等水産分野に直接関わる問題とともに、地球温暖化等の地球 環境変化についても貢献することが求められている。これらの問題は長期間のデータがあってこそ解決可 能である。その点からすると、30年続いた漁海況予報事業はまことに貴重なデータを蓄積したがまだ不 十分である。今後、観測点の見直しを行ってでも1OO年、200年と続くデータの蓄積を期待している。
(海洋生産部長)
(文献)
農林水産技術会議事務局(1969)冷水塊の水産資源の分布・消長に及ぼす影響に関する研究。研究成果、38。
伊東祐方・友定 彰(1985)異常気象と日本の農業。農業および園芸、60(7)。

Akira Tomosada
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