中央水研ニュースNo.23(1999(H12).1発行)掲載

【情報の発信と交流・研究施設の紹介】
耳石日輪解析システム紹介
大関芳沖

【導入の背景】
 硬骨魚類の内耳には耳石と呼ばれる硬組織が左右3対あり、木の年輪のような輪紋構造が見られるこ とが知られている。これは耳石日輪と呼ばれ、一般には最も大きな扁平石の輪紋が解析に用いられる。 日輪数を数えることにより魚の誕生日を知ることができると共に、輪紋の間隔を測定することで、採集 されるまでの成長過程を推定することも可能となる。
 この測定には、顕微鏡で耳石標本を写真に撮り、写真の上で輪紋数や間隔を調べる方法が用いられて きた。しかしながら天然の魚について、誕生日組成の解析や各地の魚群の成長速度の比較を行うために は、大量の標本を迅速に処理することが求められる。このため、画像解析システムを応用した耳石日輪 解析システムが導入された。

【概要及び特徴】
 本システムは、1)落射蛍光顕微鏡、2)カラーTVカメラ、3)XYステージ、4)ホストコンピ ュータ、5)カラープリンタ等により構成されており、耳石日輪計測ソフトウェアにより制御されてい る。顕微鏡で観察される耳石画像はTVカメラによりコンピユータに取り込まれ、中心から周辺までの 計測線上での日輪の位置をマークすることによって、輪紋数と輪紋間隔が計測される。計測画像ならび に計測結果はカラープリンタで出力される。部分的に輪紋が明瞭でない場合には、別に副計測線を引い てその上で計測し、その結果を主計測線に転写する機能も備えている。1画面に入りきらない大きな耳 石の場合でも、XYステージを移動させることにより、画像と計測線が同時に移動するため、連続して 計測が可能である。また明瞭な輪紋の場合には自動計測により時間の短縮が可能である。

【使用結果または成果】
 飼育しているマイワシ稚魚の耳石を蛍光色素で標識し、標識日以降の輸紋数を解析した結果、稚魚で も1日1本の日輪が形成されることが確認された。また成長の進んだ孵化後40日以上のマイワシ稚魚 の耳石を解析した結果、採集時の体長の違いは孵化後10数日目以降の累積的な成長の違いによること が明らかとなった。現在はマイワシの他にもサンマ・サバ等の耳石解析が行われており、多数の標本を 効率的に処理できる利点を生かした今後の研究展開が期待される。

(生物生態部生物生態部長)

耳石日輪解析システム全体(落射蛍光顕微鏡、カラーTVカメラ、ホストコンピュータ、XYステージデータ 変換装置)

システムを用いて耳石日輪を解析

Yoshioki Oozeki
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