中央水研ニュースNo.23(1999(H12).1発行)掲載
【情報の発信と交流・研究施設の紹介】
硬組織標本作製システム紹介
大関芳沖
【導入の背景】
魚類の脊椎骨や内耳にみられる耳石に、年輪が観察されることは古くから知られており、年齢の推定
に広く用いられてきた。また耳石には1日1本輪紋構造が形成され、輪紋の解析により誕生日や成長速
度を推定できることも近年良く知られるようになった。これらの解析を行うためには、骨や耳石など主
成分がカルシウムからなる硬組織の研磨標本を効率よく作成する必要があるが、この作業には技術を要
し、時問もかかることから、これまで多数の標本を観察することは困難であった。また電子顕微鏡を用
いた微細構造観察の際には、観察面を鏡面に仕上げることが求められるが、この作業を手作業で行うこ
とは長時間を要した。
硬組織標本作製システムは、樹脂包埋した硬組織を高精度で切断し、観察したい面の標本を作製する
と共に、観察面を均一に研磨・琢磨することによって良質の標本を容易に作成できるものである。
【概要及び特徴】
本システムは、1)試料薄片作成装置、2)精密琢磨機により構成されており、効率よく硬組織標本
が作製できるように構成されている。
樹脂包埋された標本はスライドグラスに接着し、真空吸引ステージにより試料薄片作成装置にセットす
る。試料薄片作成装置の左側は切断機となっており、ここで大体のトリミングを行う。その後、スライドグ
ラスを装置右側研磨機の真空吸引ステージに移し、研磨を進めることで希望する観察面を得ることがで
きる。研磨機の送りは最小1ミクロン単位で制御でき、レバーを数回前後するだけで希望する面の研磨
が終了する。スライドグラスは真空吸引ステージにより取り付けられているため、顕微鏡により研磨面
を観察した後、装着し直すという作業を繰り返しても研磨面がずれることはほとんど生じない。研磨後
の標本は琢磨機にセットして一定時間研磨することで、鏡面仕上げが完了する。
【使用結果または成果】
本システムは昨年度から本年度にかけて導入が進められたものであり、現在カタクチイワシの年齢査
定に向けて研究が始まったばかりである。今後はマイワシ稚魚の耳石解析標本の作製等に活用が期待さ
れている。また生態研究が遅れている各種底魚類の年齢解析にも効率的な利用が可能である。
(生物生態部 生物生態部長)

試料薄片作成装置による研磨作業 |

自動研磨装置 |

試料薄片作成装置 |
Yoshioki Oozeki
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