中央水研ニュースNo.23(1999(H12).1発行)掲載

【研究情報】
漁場保全対策推進事業水産研究所担当者会議報告
友定 彰

 「漁場保全対策推進事業」は我が国周辺の沿岸海域及び河川・湖沼(内水面)の良好な漁場環境の 維持、達成を目的として、平成7年度から実施されている。調査の実施主体は都道府県で、水産研究 所は調査方法、調査点の設定、調査結果の評価の方法などを専門家の立場から、助言することになっ ている。水産研究所の専門家の会議が、水産研究所担当者会議である。本事業に参加している都道府 県は北は北海道から南は沖縄まで太平洋側・日本海側の日本全国に及び、沿岸海域調査に参加してい る都道府県の数は39、河川・湖沼調査に参加している府県の数は27である。両者の合計が都道府 県の数より多いのは、海域と河川・湖沼域の両方に一つの府県が参加しているためである。各都道府 県は「漁場保全対策推進事業調査指針」(平成9年3月26日付け水研102号水産庁長官通違)に 基づいて調査を行い、書式に基づいた報告を行っている。
 本年度の水産研究所担当者会議が平成10年7月7日午後に中央水産研究所第2会議室で開催され た。水研担当者会議で話し合われた事項は各ブロックの会議へ出され、できるだけ全国的に共通なべ ースとなるように努カされている。本会議への参加者は北海道区水産研究所柏井海洋環境部長、東北 区水産研究所山崎室長、南西海区水産研究所玉井部長、有馬室長、高知庁舎玉井室長、西海区水産研 究所渡辺室長、日本海区水産研究所佐藤室長、中央水産研究所井関・秋山の両研究官、友定、上田庁 舎村上・伊藤の両主任研究官であった。会議の主たる議題は(1)調査結果の評価方法の検討、(2 )データの保存方法などの技術的な側面の検討と、(3)都道府県の検討協議会の設置等体制につい て、及びその他であった。
 調査結果の評価方法では、藻場の評価方法を山崎室長が、底質環境の評価方法を玉井部長が、内水 面の評価方法を村上主任研究官が提案し、議論した。
藻場の評価方法では、藻場の面積、粗密、深浅 の変化を6段階に分類して藻場の健康度を診断し、健康度が低下しているときにはその原因の究明と 何らかの対策をたてる必要があることが示された。その場合に、全国一律ということにはならず、各 海域の調査結果からその藻場の特性にあった判断を下さなければならないということが示された。底 質環境の評価方法では、底層の溶存酸素量、底泥の含泥率、全硫化物(TS)、化学的酸索要求量( COD)、強熱減量(IL)、ベントスの生息密度などから求める多様度指数により底質環境を評価 する方法が示された。議論の中で、底質環境と多様度指数の関係についてさらに検討するすることに なった。また、底質が砂質である海域での評価方法をどのようにするかが議論され、とりあえずは、 底質の含泥率の測定を継続することになった。内水面の評価方法では、基本的な考え方として、調査 項目をできるだけ少なくすること、厳密すぎず簡便な方法を目指すこと、同一地域での経時変化を見 るという方針で望むこととし、河川では、河川・河床形状、付着藻類、底生動物の分布状況、魚類生 息状況から、湖沼では、大型水草群落、底生動物の分布状況、魚類生息状況から健康度を診断する方 法が示され、合意された。
 漁場保全対策推進事業は平成11年度で終期を迎えるので、12年度以降の事業の組立をどのよう にするか早急に検討する必要がある。本来、長期間のモニタリングが必要な事業であるのに、5ケ年 で事業が終わって次の事業を考えなければならないのでは、同一の品質を持ったデータをとり統ける ことに無理が生じる恐れがある。各ブロックの会議が10月以降に持たれることになっている。各ブ ロックが実施主体者を交えて、データのこと、評価のこと、将来への事業の継続のことなどを譲論さ れて、本事業が実りある成果を出すことを期待する。

(海洋生産部長)


Akira Tomosada
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