中央水研ニュースNo.22(1998(H10).12発行)掲載

【研究調整】
平成10年度内水面(中央ブロック)水産業関係試験研究推進会議の概要
杉山元彦

 今回で9回日となる平成10年度内水面(中央ブロック)水産業関係試験研究推進会議が、平成9年5月 28目及び29目の両日、長野県上田市で開催された。
 今回の会議には、41都道府県の42内水面関係公立水産試験研究機関をはじめ、水産庁資源生産推進部 研究指導課、同漁場資源課、さけ・ます資源管理センター、養殖研究所、水産工学研究所、国際農林水産業 研究センター、全国内水面漁業協同組合連合会及び中央水産研究所から計83名が参加し、機関間の連携を 深めるために、情報の交換や重点的に実施すべき研究課題等に関する論議が行われた。
 会議では中央水産研究所長及び水産庁研究指導課長からの挨拶の後、まず、中央水産研究所から、昨年度 会議のフォローアップとして平成9年度希少淡水・汽水魚類増養殖試験研究連絡会議の概要報告があった。 また、コンピュータ通信網の活用による研究機関間の情報流通効率向上に関する検討結果も報告された。そ のなかで、平成10年度には、半数以上の内水面関係公立水産試験研究機関でコンピュータ通信施設が整備 される見通しであるが、現状では機種やソフトの違いにより、テキスト文以外の情報受信が処理できないこ とがあるなど、実用化に向けてはさらに検討が必要であることなどが明らかにされた。
 次いで、平成9年度の主要試験研究結果及び平成10年度の計画について、各試験研究機関から寄せられ たアンケートの集計結果を中央水産研究所で取りまとめて報告した。その集計結果から見ると、平成9年度 も急病関連や好ましい河川像構築、ブラックバスなどの外来魚対策に向けた研究課題が8年度よりも増えて おり、また、10年度も同様な傾向にあった。このことは、内水面水産試験研究機関が内水面の重大な問題 として、これらの課題に取り組まざるを得ない状況になっていることを反映しているものと考えられる。
 つづいて、関連報告として杉浦研究指導課長から、本年10月に予定されている水産庁研究所の組織改正 についての説明があり、その中で水産庁研究所における内水面関係の指拝命令系統の改善についても、長官 通達の見直しに織り込む方向で検討されていることなどが紹介された。また、生態系保全室橋崎環境企両係 長からの希少魚保護に関する新規事業の説明や、田中全国湖沼河川養殖研究会長による同研究会の平成9年 度の活動と10年度の計画が報告された。
 また、平成9年度成果情報候補課題として、14公立水産研究機関及び中央水産研究所内水面利用部から 応募のあった17研究成果について、その個々の概要を事務局から一括説明のうえ、評価及び分類の提案を 行った。協議の結果、その全課題を候補課題として承認した。なお、事務局が一括して提案を行う方式につ いては疑問の声もあり、今後は評価方法を改善する必要があると考えられる。
 ふたつ目の協議事項として、事務局からはアユ冷水病を含むすべての伝染性魚病対策についての検討を提 案した。しかし論議の結果、当面するアユ冷水病に的を絞って、「防除技術の確立」及び「生態系への影響 解明」の両面から研究に取り組み、その対策を効率的に確立するための国公立水産試験研究機関が一体とな った体制を早急に立ち上げることで意見の一致を見た。これを受けて、内水面利用部では「アユ冷水病対策 研究会」を設立することとし、水産庁や関係機関と協議を進めている。
 最後に、9年度の推進会議で今回の主要協議事項とされた、内水面における生物多様性の保全に関する研 究の重点化方向及び連携・分担について意見を交換した。その結果、生物多様性の保全に関する研究の重点 化方向としては、まず、「魚に優しい河川像の解明」が挙げられることを確認した。また、河川工事等の際 、土木サイドに好ましい河川像を提示するためには、数字で表したデータが不可欠であることから、その第 1段階としてアンケート調査等により、内水面利用部が中心となって、魚類の生息条件等のデータの集積を 図ることとなった。
 また、つりブームに乗って全国的に密放流され、在来種の生息が脅かされている外来魚に対する対策も重 点化すべき課題であり、その駆逐、あるいはその影響軽減のための有効かつ安全な手法開発に向けた研究も 推進する必要があるとの認識で一致した。
 以上の情報交換や論議を通じて、内水面には早急に解決しなければならない問題が山積していることが浮 き彫りとなり、今後、これらの問題を効率的に解決するために、一層の連携が必要であることを痛感した。
(内水面利用部長)

Motohiko Sugiyama
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