中央水研ニュースNo.21(1998(H10).7発行)掲載

【研修と指導】
中国における淡水魚の中間素材化技術の研究開発
里見正隆

 平成10年3月1目から30目までの1ヶ月の間 短期派遺研究員として上海と湛江(広東省)に行っ て来ました。今回の出張では上海水産大学食品学院 中目合作研究室に滞在し、中国産淡水魚の中問素材 化技術の開発研究の一環として淡水魚の発酵食品化 に関する基礎研究を行ってまいりました。
 中国においては国土のほとんどが内陸であるた め、水産物中に淡水魚の占める割合は大きく、養殖 も盛んに行われていました。そのため、淡水魚の有 効利用は安定したタンパク質供給につながると期待 されています。しかし、中国では、ほとんどの淡水 魚は活魚のまま流通し、加工品はあまり好まれてい ないような印象を受けました。また、海産魚のよう な活魚輸送の困難な魚種については冷蔵・冷凍設備 なしで流通されるため(写真1)、''本当に大丈夫?'' といった感じです(中国の水産事情については中央 水研ニュースの福田裕氏およぴ金庭正樹氏の記事を 参照されたし)。このような背景よりJIRCAS(国 際農林水産業研究センター)と上海水産大学では水 産食品の安定供給を目指し、流通性に優れている加 工品を淡水魚で製造すべく共同研究を行ってきまし た。今回私が担当したのは加工に伴い蓄積される残 洋(魚の内臓や頭等)から発酵調味料を製造するた めに必要な基礎データの収集です。具体的には、源 料魚(ハクレンおよぴコクレンの内臓や表皮)や 発酵に使用する食塩に存在する微生物を調べてきま した。私が滞在していた3月は丁度卒論の学生が硯 究室に配属されてきた時期(中国は9月入学で7月 卒業)だったので、学生に指導しながら実験する事 になりました(写真2)。中国の学生は良く勉強し 英語も堪能なのですが、実験設備が貧弱であるのと 卒論に費やす時間(正味4ケ月)が少ないため、あ まり実験慣れしていないようでした。
 さて、ここで今年度以降上海に行かれる方のため に、実験事情について説明します。目本に比べ大型 機器の価格は割高で入手が困難であるため目本から 輸入することが多いのですが、電圧が異なる (220V)ため変換器が必要です。また、特殊試薬に ついても学校から発注するより自分で小売店*に出 向いて発注(探索)した方が問違いが無いでしょ う。もっとも、目本から自分で持っていくのが一番 良いと思いますが…。しかし、なんと言っても 問題なのが上海の水です。水道は完備されています が、もともと硬水のうえ浄水方法が悪く濁っている ため器具の洗浄や蒸留水の製造には心配です。その ため、大学で精製水を購入しているようですが、虫 か浮いていたりして安心できません。超純水製造器 の傷みも早く、早急な対応が望まれます。いくつか 問題点だけを挙げましたが、中国側のスタッフもこ れらの事を十分認識していますし、年々研究環境も 整備されつつあると聞いていますので解消される目 も近いと思われます。
 最後になりましたが滞在中、英語・中国語ともに 堪能でない私の生活を助けていただいた研究室の皆 様並びにこのような機会を与えてくださった関係者 の皆様にこの場をお借りしてお礼を申し上げます。
(加工流通部 食品保全研究室)

* 中国では多くの研究所・大学(公立)に対する国から の援助金が少ないため、独自の資金源を確保している (例、食品工場や土産もの加工場等)。生化学関係の研究 所では子会杜を作り、試薬や消耗品を輸入または製造し、 同業者に販売している。

Masataka Satomi
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