中央水研ニュースNo.21(平成10年7月発行)掲載

【研究調整】

平成9年度アコヤガイ大量へい死に関する調査研究の概要

松里 寿彦

 平成8年夏に顕在化したアコヤガイの軟体部赤色 化を伴う大量へい死はその後も続き、一目も早い原 因究明、さらに有効な対策の確立が望まれている。 真珠員母貝養殖及び真珠貝養殖においては、過去何 度か大量へい死が発生し、その都度原因究明と対策 がとられてきたが、今回遭遇した大量へい死事例は 次のような特徴を持つ。①母貝養殖、真珠養殖の両 方ともに被害が出ていること、②へい死に至る過程 が比較的長期にわたり軟体部が特異に発色し全身の 衰弱の後へい死に至ること、③へい死の発生海域が ほぼ全養殖地帯に没ぶこと、さらに、④へい死率に っいては漁場や養殖形態により著しく異なることな どである。また、いくつかの漁場での観察結果から は、漁場内においてはゆるやかな蔓延の様相を呈す ることなどが知られていた。 本事例が明らかとなった平成8年の海象及び気象 は、平年に比べ少雨、高気・水温、餌プランクトン の減少等異常であり、そのため平成8年度は、まず 被害状況の把握とともに海洋、漁場環境の調査に主 眼が置かれた。これらの調査研究を効率的に進める ために、関係する水産庁研究所及び県試験研究機関 による調査体制を組織する一方、農林水産省農林水 産技術会議緊急調査研究及び科学技術庁科学技術振 興調整費により緊急調査を実施し、その結果を「平 成8年度アコヤガイの貝柱の赤色化と大量へい死に 関する緊急調査研究実施報告書平成9年3月水 産庁養殖研究所」「平成8年度科学技術振興調整費 アコヤガイ主要生産海域における異常へい死原因の 究明と環境予測に関する緊急研究成果報告書平成 9年10月科学技術庁研究開発局」にとりまとめ 報告した。これらの調査研究成果から本事例は、ア コヤガイの新たな疾病の疑いが濃厚となり、平成9 年度は当初より環境・被害調査とともに疑われる疾 病の原因究明のための研究の強化が図られた。ま た、アコヤガイ大量へい死による母員養殖、真珠養 殖生産地での被害の増大や真珠業界への影響に伴 い、本事例はは広く杜会的関心を呼び、ホルマリン を含む総合的な原因究明が強く要請された。ホルマ リンと本事例との関連については、養殖研究所、水 産工学研究所による調査研究が行われ、その成果は 現在とりまとめっつある。その他、原因究明のため の研究を強化するため、養殖研究所推進会議傘下の 魚病部会の下に「アコヤガイ大量へい死の要因に関 する研究会」を組織し、関係各県試験研究機関と連 携して研究を進めている。研究の成果については、 平成9年10月、平成10年3月の2回にわたり、大 学、関連業界を含め、本事例関係者に参加を要請 し、「アコヤガイ大量へい死緊急調査対策研究担当 者会議」(養殖研究所主催)を開催し、研究成果情 報を広く収集し討議するとともに、研究体制を確認 し研究を進めている。種々の成果から、本症は感染 症であることが明らかと一され、現在、その病原体の 最終同定に全カを挙げて取り組んでいる。 本事例の調査研究の推進に当たっては、水産研究 官が行政との窓口及び関係する水産庁研究所間の調 整及ぴ環境調査態勢の確立等に積極的に関与してき た。調査研究の推進に当たり、常にあらゆる支援を いただいた水産庁をはじめとする関係省庁に感謝す るとともに、さらに一層の支援をお願いしたい。ま た、研究に携わる水産庁研究所、各県水産試験研究 機関等に一目も早い本事例解決のための一段の努力 をお願いする。以下、平成10年度の調査研究体制 は下図のとおりである。
(水産研究官現養殖研究所企画連絡室長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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