中央水研ニュースNo.20(平成10年4月発行)掲載

【研究調整】
平成9年度希少淡水・汽水魚類増養殖試験研究連絡会議の概要
杉山 元彦

 希少淡水・汽水魚類増養殖試験研究連絡会議は、 中央水産研究所長の主催により、平成4年度から、 希少水生生物保存対策試験事業の成果報告会もかね て毎年開催されており、今回で6回目となる。  平成9年度の会議は、10月21日に長野県上田市 において、道府県の水産試験研究機関、水産庁、全 国内水面漁業協同組合連合会、日本水産資源保護協 会、養殖研究所及び中央水産研究所の計34機関か ら、52名の参加を得て開催された。
 今回の会議では、20道府県から、平成8年度に精 力的に進められた、計23種の希少水生生物の生態 や増殖手法に関する研究の成果が紹介された。ま た、その質疑応答の過程で、例えばイワナ産卵場造 成技術等、ある機関が蓄積した技術情報等を、他の 機関が、各自の研究を効率的に推進するために必要 としていることが明らかとなった。これらのことに より、研究の連携調整も任とする中央水産研究所の 役割の重さを再認識させられた。
 次いで、水産庁生態系保全室などから、淡水魚を 中心とする希少生物保護・生物多様性保全に関す る、水産庁や環境庁、建設省の最近の対応ぶりなど が紹介された。その結果、①生態系内の弱者ともい える希少魚の生息が、漁業の基盤となる内水面生態 系の保全指標となること、②生態系保全という社会 的なニーズに対応するために、生物多様性の保全と 漁業振興の両立を図る技術の開発に迫られているこ と、③将来の水産振興に備えて、貴重な遺伝資源の 保存を図る必要のあること、等の理由により、水産 試験研究機関が希少生物に関する研究にも対処しな ければならないことが再確認できた。
 さらに、平成9年度内水面(中央ブロック)水産 業関係試験研究推進会議で、今後の重点化方向とさ れた「生物多様性分析の推進」、「多様性保全手法の 開発」及び「天然水域への希少種放流マニュアルの 確立」を実行する際の基本となる調査研究手法につ いて、中央水産研究所から事例を紹介し、今後、こ れを参考に統一的な手法の確立に向けた検討を続け ることを決め、会議を終了した。
(内水面利用部長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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