中央水研ニュースNo.20(平成10年4月発行)掲載

【情報の発信と交流】
平成9年度第2回中央ブロック長期漁海況予報会議
木下 貴裕

 本会議は平成9年12月17、18日、本所において 15県水試、3水研、水産庁、気象庁、2団体の計63 名の参加者をもって開催されました。この会議は 1998年3月までの常磐~熊野灘海域における、海 洋条件、サバ類やイワシ類の来遊量及び漁場位置と 漁期を予測することを目的とします。以下に予測内 容を概説しますが、詳細は「長期漁海況予報No.104 号」を参照して下さい。
1.海洋条件
 黒潮は都井岬沖から潮岬沖にかけて概ね接岸し、 小蛇行が見られないので、遠州灘沖では直進流路を とり続ける。今後都井岬沖に小蛇行が発生しても、 予測期間中に遠州灘沖に東進し、大蛇行型に発達す る可能性は低い。近年の黒潮流路の傾向から、N型 (直進型)を基調とした流路が持続すると予測され た。
2.マサバ
 マサバの漁獲状況は、近年では比較的加入量水準 の高い1996年級群によって好調に推移してきたが、 1997年級群の加入量水準は96年級群よりもかなり 低いと推察され、予報期間中の来遊量水準は前年並 みか、前年をやや下回ると予測された。
3.マイワシ
 マサバ同様、マイワシの漁況も比較的加入量水準 の高い1996年級群によって好調に推移してきたが、 1997年級群は96年級群よりも加入量水準がかなり 低いと推察され、来遊量水準は前年を下回ると予測 された。
 マサバと異なる来遊量予測となったのは、マイワ シとマサバでは漁獲のされかたが違い、資源の減り 方に差があるためです。
4.カタクチイワシ
 成魚大型群と小型群の、漁期間及び海域間での漁 獲状況の関係、またカタクチシラスの漁獲状況など から、予測期間中は成魚小型群が漁獲の主体とな り、来遊量は前年を下回ると予測された。
 現行の予報会議では向こう4ヶ月間を対象に予測 を行っています。これを長いと感じるか短いと感じ るかは人によって異なるでしょうが、たとえ4ヶ月 間でも未来を、しかも量的に予測することは容易で はありません。そこで予測精度の向上を目的とした 「漁海況予測技術研究会」を、毎年12月の予報会議 に連動して開催することになりました。今回は第1 回目でテーマは「マイワシの漁況予測の精度向上」 です。以下に発表課題を記載します。
1.マイワシ資源の変動に伴う北海道周辺海域における漁獲量変動
中明 幸広 (北海道立釧路水産試験場)
2.鹿島灘周辺海域におけるマイワシ1歳魚の大型群と小型群の成熟進行にともなう漁場分離
冨永  敦 (茨城県水産試験場)
3.1997年漁期,常磐~房総海域におけるマイワシ越夏群の生物特性と集合様式
内山 雅史 (千葉県水産試験場)
4.親潮の南下動向に起因したマイワシ再生産メカニズムの変化に関する考察
海老沢良忠 (茨城県水産試験場)
5.シラス類来遊量の経年変化
中村 元彦 (愛知県水産試験場漁業生産研究所)
6.コホート解析に基づく漁獲量予測の可能性と限界
木下 貴裕 (中央水産研究所)

 研究会の内容は、次回(3月)の「長期漁海況予 報No.105号」に掲載されます。今回の研究会では、 統計手法を用いた予測や生物学的な知見の整理、さ らには前回の予測が的中しなかった懺悔のような発 表も行われました。研究会の目的である予測精度の 向上のためには、成功例の報告にとどまらず、調査 研究の計画、途中経過などの未完成の経過報告や上 手く行かなかった失敗例の報告なども大きな意味が あると考えています。
 今回は研究発表会形式としましたが、テーマに よっては学識経験者の方を招いての講演会形式や ワークショップも考えています。今後この研究会が 予測技術の向上にとどまらず、関係各機関の連携と 研究協カの場として発展するよう努力していきたい と考えています。
(生物生態部資源生態研究室)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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