中央水研ニュースNo.19(平成10年1月発行)掲載

【情報の発信と交流】
1997年漁業に関する日口科学技術協力協定に基づく研究交流会報告
渡辺 洋

 この交流会は毎年の日口漁業合同委員会で採択さ れる、「漁業の分野における日本国とロシアとの間 の科学技術協力計画」に基づくものである。具体的 には「サケ・マス、サンマ、マサバ、マイワシ、イ カ及びその他の魚種の調査、資源状態及び資源の合 理的な利用に関する日口漁業専門家・科学者会議」 において作成された内容に従って開催され、サン マ、マサバ、マイワシ、カタクチイワシおよびスル メイカの生態学及び数量動態をテーマに、通訳を含 む3名の科学者を毎年交互に、相方の研究所に10 日間受け入れることとなっている。実施者は日本 国側は水産庁水産研究所、ロシア側は太平洋漁業海 洋研究所(チンロセンター)である。科学者及び専 門家の滞在のための費用は、入国時点より受け入れ 国が負担する決まりとなっている。なお、従来は上 述の漁業専門家・科学者会議と交流会が同じ国で行 われていたが、2年前にそれぞれの会議を別々の国 が持つことになり、本交流会については、昨年と同 様に本年も日本国側が受け入れた。
 本年は太平洋漁業海洋研究所の黒潮魚類資源研究 室長V.A.ベリャーエフ博士、太平洋資源研究室 長E.P.カレジン博士、頭足類研究室研究員N. M.モクリン氏の3名が9月14日より9月25日 まで、中央水産研究所(16、17、22日)、北 海道区水産研究所(19日)、日本海区水産研究所 (24日)の3カ所を訪問し、意見交換を行った。中 央水産研究所では16日に初期生態研究室員から潮 岬以東海域におけるマサバ、マイワシ、カタクチイ ワシの産卵量及び卵仔魚の分布状況を説明した。ロ シア側からはグレートピーター湾のカタクチイワシ 及び浮魚類の産卵状態が報告された。17日は資源 生態研究室員が最近の太平洋のマサバ、マイワシ、 カタクチイワシの資源状況及び我が国経済水域内で の漁況を説明した。これに対しロシア側は1993 年までのオホーツク海におけるロシア漁船によるま いわし漁業の経過を紹介した。22日には東北区水 産研究所の手島和之資源管理部浮魚第1研究室長及 び数理生態研究室員が参加して、サンマの資源状況 及び漁況について報告するとともに、サンマを対象 とした中層トロールによる漁獲試験について紹介し た。これに対しロシア側からはサンマの回遊に関す る報告があった。
 これまで、日本とロシアの相互の200海里水域 内における相手国への漁獲割当において、太平洋側 のいわし、さば類は日本からロシアヘの漁獲割当と して最大のものであり、それゆえ日口科学交流の窓 口も中央水産研究所が中心になって進めてきた。し かしながら、近年太平洋のマサバ資源の低水準期 に、マイワシ資源の急激な減少が起こり、現在、ロ シアは我が国200海里内でのいわし、さばを対象 とした操業を行っていない。一方、ロシア側は最近 は日本海でのスルメイカ及びその他の浮魚資源の動 向に関心を持っており、昨年の漁業専門家・科学者 会議でも、これらについての情報交換を提案してい る。この様な資源状態と相互の関心事項の変化を踏 まえ、今後、より一層日本とロシア間での意見交換 の成果を上げるため、協カ計画の内容や、日本側で の対応の体制を再検討すべき時期に来ているように 思われる。
(生物生態部長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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