中央水研ニュースNo.19(平成10年1月発行)掲載

【研究調整】
漁場保全対策推進事業水研担当者会議報告
友定 彰

 漁場保全対策推進事業が平成8年度に発足した。 それ以前は、10年以上の期間、水産庁研究部漁場保 全課と都道府県のあいだで事業が行われていたが、 研究に役立つ事業にするためには、水産研究所も助 言者的な立場で参加し、有意義なデータを取得しよ うという発想の下に、水産研究所担当者が集まるこ ととなった。本会議のメンバーは各水産研究所の海 洋環境部・海洋生産部・環境保全部・資源増殖部・ 内水面利用部の専門家、分野別研究官及び水産庁研 究部の担当官によって構成されている。
 本事業の実施主体は都道府県であり、都道府県は 良好な漁場環境の維持・達成に資するため、浅海内 湾汽水域(海面)及び河川湖沼域(内水面)におい て、定期的に水質調査、藻場調査、底質・ベントス 調査を行い、これらのデータを蓄積して解析する。 各ブロックは都道府県の担当者、ブロックの水産研 究所担当者及び国・地方の行政担当官が集まって、 ブロックの担当者会議を開催する。その際、水産研 究所担当官は各ブロック毎に適切な助言を行う。
 平成8年度に海面を調査する自治体数は45、内 水面を調査する自治体数は26である。平成9年度 からは鳥取県が海面の調査に加わり、海面を調査す る自治体数は46になる。これらの自治体の中に は、海面と内水面の両方を調査する自治体もあり、 各自治体が本事業にかける期待は大きい。
 平成9年度の水産研究所担当者会議が平成9年7 月8日に中央水産研究所第2会議室で13名の参加 を得て開催された。会議の内容は都道府県が平成8 年度に実施した調査結果の検討及び調査結果の評価 方法についての2点を主とし、その他の項目につい ても議論した。
 都道府県実施結果の中で、三重県が行った海面調 査と長野県が行った内水面調査の2例について、両 県から提出された報告書をもとに議論した。本事業 は短期間で終るのでは、あまり効果がないので、で きるだけ長期間持続できる調査をプラニングする必 要があることが指摘された。
 調査結果の評価方法については、本事業が昨年度 から始まったところであり、本事業で取得したデー タを用いた評価を行うには至らなかった。どのよう な視点で評価を行うかについて、藻場調査、ベント ス調査、内水面の生物調査についてそれぞれの専門 家が、考え方を紹介し、質疑討論を行った。本事業 には北海道から沖縄県までの亜寒帯域に面する自治 体から亜熱帯域に面する自治体までが参加している ので、生物相が種々様々であり、一律に評価する方 法があるとは考えにくい。それぞれの地域特性に 合った評価法が必要であろうという意見が大勢を占 めた。
 その他の項目では、データベースの構築について 話し合った。本事業では、今のところデータベース 構築に要する費用が積算されていないが、将来はこ のための費用が積算されることが想定されている。 現段階では、各自治体が調査した結果は印刷物とし て国にあがってくるだけであるが、人事異動等で担 当者が代わると、以前に行った調査結果が散逸する 恐れがある。各自治体からの報告を印刷物のみなら ず、磁気媒体でも収集しておく方が良いとの意見が 出された。それに従って、研究部漁場保全課あて各 自治体に印刷物を作成するために作ったフロッピー ディスク(調査結果データも含む)も提出するよう 依頼することとした。
 漁場保全に関わる事業は短期間で終わったのでは 効果は少なく、できるだけ長期間にわたるモニタリ ングが必要である。各自治体も長期間継続できる調 査体制・調査方法を検討することを期待する。
(海洋生産部長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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