中央水研ニュースNo.19(平成10年1月発行)掲載

【情報の発信と交流】
平成9年度中央ブロック卵・稚仔プランクトン調査研究担当者協議会
大関 芳沖

 本協議会は中央水産研究所長の主催により平成9 年7月14日、当中央水産研究所において開催され た。本協議会には、岩手県から和歌山県までの太平 洋側の11の都県試験研究機関、大学、民間、南西 海区水産研究所及び中央水産研究所の計16機関か ら、総計31名が参加した。
 生物生態部長の挨拶に引き続き、11水試、南西 水研及び中央水研から、1997年冬春季の主要魚 種の産卵状況及び稚仔魚の分布に関する調査の概要 が報告された。
 各機関からの報告に基づき、中央水研が提案した 「1996年・1997年冬春季における主要魚種再生産状 況の総括」の原案が検討され、一部修正の上採択さ れた。その概略は以下のとおりである。

1.96年の産卵期
(1)マイワシ:1995年の10月~1996年の9月ま での産卵は、1月のごく少量の産卵から始まり5月 をピークに7月まで継続した(図1)。潮岬以東海 域での総産卵量は19.1兆粒、潮岬以西海域では66 兆粒であった。瀬戸内海では産卵期は4~6月を中 心に、東部海域での産卵量は4.1兆粒、西部海域で は4.2兆粒であった。

(2)カタクチイワシ:1996年の産卵は3月から始 まり11月まで継続した(図2)。三重県から福島県 までで集計した潮岬以東海域では6月が最盛期で、 総産卵量は2,298兆粒であった。潮岬以西海域で は、1994年および1995年には低水準であった春季 発生群が特に5月に顕著に認められ、年間産卵量は 1,000兆粒を越え、前年の2倍以上となった。瀬戸 内海では産卵期は6~9月を中心に、東部海域での 産卵量は230兆粒、西部海域では310兆粒であった。

(3)サバ属魚類:1996年の産卵は3月から始まり 7月まで継続した(図3)。三重から福島県までで 集計した潮岬以東海域では6月が最盛期で、総産卵 量は28.7兆粒であった。

2.97年の冬春季
(1)マイワシ:1997年冬春季には、11月から2月 まで小規模な産卵が見られた。3月から5月には沿 岸域で継続した産卵が見られ、黒潮域でも若干の産 卵があった。産卵水準は1996年より増加した。 マイワシシラスは紀伊水道ではきわめて不漁で、 また渥美外海でも漁獲量は昨年の10分の1であっ た。遠州灘・駿河湾では5月下旬まで低調で推移 し、6月には終漁した。漁獲量は昨年同期の3%に とどまった。相模湾では昨年同期の1/4にとどまっ た。

(2)カタクチイワシ:1997年冬春季の産卵は、2 月から始まり5月まで継続中である。2、3月の産 卵水準は潮岬以西で前年並み、潮岬以東で前年より 高いと推定される。
 カタクチシラスは紀伊水道ではきわめて不漁で あった。渥美外海では漁獲量は平年並み、遠州灘・ 駿河湾では5月下旬まできわめて低調に推移した が、6月に好漁となった。
 相模湾では1996年に次ぐ高水準であった。鹿島灘 および常磐南部では4、5月には過去15年間で最 高の漁獲を記録し、6月中旬より低調となった。

(3)サバ属魚類:1997年冬春季のサバ属魚類の産 卵はここ数年同様低水準であった。

その他、卵稚仔データの同定と入カに関する問題 点、FIRESCOシステムによる卵稚仔データ管理につ いて討議された。また、中央水研・佐藤からEPM(Egg Protection Method)によるマサバ資源量の推定の 試みについて報告があった。
 なお、本協議会の詳細については、平成9年10月 に「平成9年度中央ブロック卵・稚仔、プランクト ン調査研究担当者協議会研究報告No.17」を発行し ているので、これを参照されたい。

(生物生態部初期生態研究室長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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