中央水研ニュースNo.19(平成10年1月発行)掲載

【情報の発信と交流】
養魚用飼料有害物質等残留防止緊急対策事業
小山 次朗

 近年、食品に含まれる有害物質が問題となること があり、養殖魚を含めた食品の安全性に対する一般 の関心が高まっている。食品については食品衛生法 により、種々の有害物質残留基準が定められ、その 安全性が確保されている。一方、畜産物及び養殖魚 に残留する有害物質は、その多くが飼料に由来して いるものと考えられる。このため、飼料由来の有害 物質の畜産物あるいは養殖魚への蓄積を防止するた め、飼料に含まれる有害物質の指導基準の設定が必 要とされている。畜産用飼料に関しては既に有害物 質の指導基準が定められており、今後も基準の設定 される物質が増加することとなっている。しかし、 養殖魚用飼料に関してこのような基準は設定されて おらず、畜産用飼料の指導基準が養殖魚用飼料でも 適応可能かどうか不明なため、養魚用飼料の有害物 質指導基準設定のための基礎的な検討を行うための 試験が必要とされている。本事業ではこのような試 験を実施するとともに、既存データの収集を図るこ ととなった。
 本事業は、水産庁振興部振興課が予算化したもの で、平成4年度から8年度までの5年間で第一期の 試験が行われた。対象となった養殖魚は、淡水魚の ニジマス、コイ、アユ及びウナギ、海産漁のマダイ 及びブリであり、これらの養殖魚に、フェニトチオ ン(有機燐系殺虫剤)、γ一BHC、ヘプタクロル、 ディルドリン、DDT(有機塩素系殺虫剤)を添加 した飼料を最長で12週間投与し、その間筋肉及び 肝臓中蓄積量を測定し、一日許容摂取量(ADI, A㏄eptable Daily Intake、人間が一生涯摂取し続 けても有害な作用が無いとされる一日当たりの許容 摂取量)等との比較を行い、その安全性を検討した。 飼料中有害物質濃度は、畜産用飼料の指導基準を中 間の濃度とし、その5倍及び1/5濃度を設定し た。いずれの魚種、いずれの有害物質についても本 試験で行った飼育期間内での蓄積量が、食品として の安全性で問題となることは無かった。今後は、こ の5物質について指導基準案を作成し、飼料審議会 (農林水産省畜産局所管)に提出して審議されるこ ととなろう。
 平成8年度までで5物質について指導基準策定の ためのデータをまとめたが、この他に基準値を設定 すべき多くの物質が残されている。例えばダイアジ ノン等の有機燐系殺虫剤、重金属類等であり、第2 期として平成9年度から毎年1~2物質について第 一期と同様の試験を行い、指導基準策定のための基 礎データを作成する計画となっている。
(環境保全部水質化学研究室長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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