中央水研ニュースNo.18(平成9年11月発行)掲載

【情報の発信と交流・研究室紹介】
漁業経営経済研究室
Fisheries Economy Section, Fisheries Management and Economy Division
黒沼 吉弘

 漁業経営経済研究室の所属する経営経済部は、昭 和56年10月に東海区水産研究所資源部の水産経 済研究室として設置されたことから始まりました。 その後、平成元年の中央水研の発足により、3研究 室体制(漁業管理研究室、消費流通研究室、漁業経 営経済研究室)の経営経済部となり現在に至ってい ます。当部における研究活動の中心は、中央水研の 研究基本計画(平成6~15年)における5つの柱 の1つである「水産業の経営経済構造の解明」に関 する研究で、これは漁業経営経済研と消費流通研の 2研究室が主に担当しています。また、漁業管理研 は「資源・漁業の管理技術の確立」(これも5つの 柱の1つです)における漁業管理の社会経済的基盤 確立の研究を担当しています。
 本稿で紙面をお借りして紹介させていただく漁業 経営経済研究室は、上記の「水産業の経営経済構造 の解明」という研究大枠のもとに設定された「漁業 経営と経済構造の特質の解明」という研究課題にお ける「漁業地域の経済活性化手法の開発」に関する 研究を担当している研究室です。その研究内容は、 研究の前期(平6~10年)では、漁業の経営構造 を解明し漁業地域の活性化方策を明らかにするた め、許可漁業の経営構造を解明し、経営の軽量化や 多角化に関する研究を行っています。また、研究の 後期(平11~15年)では、漁業権漁業等の経営 構造の解明を行うほか、漁業制度が漁業構造や漁業 地域に与える規定性を明らかにするための研究を行 う予定にしています。
 このように漁業経営経済研では、社会経済や諸制 度等の視点からどのような方策によって漁業地域の 経済活性化が図れるのか、という点に焦点をおいて 研究業務を行っています。平成6~10年度の間に おける具体的研究としては、次の様な研究課題を設 定しています。
(1) 漁業経営構造の解明とその活性化に関する研究  (平6~8年度)
(2) 海洋性レクリエーションを活用した漁村の活性 化に関する研究 (平7~9年度)
(3) 経営改善に向けた減船と漁獲可能量設定の相乗 効果の解明  (平9~10年度)
 これら3つの課題は大きく分けて2つの研究分野 に分類することができます。先ず、(1)と(3)は、漁 業における過剰投資を解消し持続的な経営活性化を 講ずるための一つの方策である減船に焦点を絞った 経営の軽量化に関連した研究です。(2)は、海洋性レ クリエーション導入事例の分類や海洋性レクリエー ション等が漁業経営に及ぼす影響を計測する指標構 築の基礎研究といった、経営の多角化に関連した研 究です。このように経営の軽量化や多角化といった 研究を通して漁業地域の経済活性化手法を開発しよ うとしています。
 主な研究成果としては、(1)では「中小漁業の漁獲 努力量削減方策としての減船の効果について」(『水 産経済研究』No.55、水産庁企画課、1996)を当研究 室が中心となり研究し、これまで社会経済的に評価 が行われてこなかった減船効果に関して、3つの事 例調査(三重県中型まき網、秋田県と島根県底びき 網)に基づく経営改善効果や地域波及効果等を含む 経済諸効果を検証するとともに減船の背景にある経 済理論の整理を行っています。この研究を展開した 課題が(3)ですが、これは国連海洋法批准に伴う漁 獲可能量設定という状況のもと経営改善に向けた減 船の経済効果がどのようになるのか検討しようとす るものです。
 また(2)の研究における中間成果としては、 "Revitalization  of  fishing  communities  in  Japan" (Reconciling  Pressures  on  the  Coastal  Zone,  OECD, 1996, pp. 85-98)等があり、レクリエーション 施設への資本投資の有無によってその導入事例を2 つに類型化し、各5種類の分類を行うとともに、事 例調査(千葉県小湊漁協の水産物直販所等)によっ て立地条件や施設状況、地域効果を検証していま す。現在、レクリエーション等が漁業経営に及ぼす 影響の指標を作成するための基礎研究として、遊漁 等との調整を課題とする栽培事業を事例としながら 受益者負担の基準解明に関して、地域資源利用の活 性化を促す事例分析や理論検討を継続しているとこ ろです。
(経営経済部)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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