中央水研ニュースNo.18(平成9年11月発行)掲載

【情報の発信と交流】
フィリピン・インドネシア紀行
南 哲也

 水研の事務官の皆さん、我々、事務官でも外国出 張に行けるんですよ!ということで、4月6日から 14日までの間、加工流通部の中村加工技術研究室 長、大村研究員と私の3人で「輸入養殖魚の安全性 に関する研究協議」のため東南アジアに行ってきま した。
 諸先輩方からの「大丈夫?」との激励を背に(どう やら風俗的な心配らしい)、新婚旅行以来の2度目 の外国へ出発しました。
 成田から約4時間の空路でマニラに到着。入国手 続きを終了し、空港を出た途端、そこは真夏。さあ これからだ、という気分が一蹴されたのは、銀行、 スーパーマーケット、はたまたホテルに至るまで、 マニラの街中に立っている警官・ガードマンの多 さ。ただ立っているだけならともかく、みんなライ フルを持って睨んでいるんですよ。何でも北朝鮮か らの亡命者がマニラ市内に滞在しているための戒厳 体制とのこと。それからの私は、良い子になること を決意しました。
 フィリピンでは旅行日を除いて3日間、滞在しま したが、その間、フィリピン水産局水産研究所、食 品発展研究所を訪問し、施設を見せていただくとと もに、フィリピンの水産業の現状およびHACCPの導 入状況に関しての意見交換を行いました。施設につ いては何といっても天下のJICAさんからの提供印。 立派でした。研究室は用途別に整然と配置されてい て、実験器具、薬品類もとても使いやすく綺麗に並 べられていました。またスタッフは女性の方が多 く、フィリピン(の一部の地域と思う)では優秀な頭 脳労働者の大半が女性で、肉体労働を男性がやると いうのがステータスとのこと。そういえばこの国に はかつて女性大統領がいましたよね。フィリピンで の最後は、SIM水産産業(株)というHACCP導入工場 を見学させていただきました。ここは、エビを中心 にタコや貝類、きす(天ぷら用)などを主に日本に輸 出しているそうで、その作業場はというと・・・・、 あまりHACCPを意識させられるというものではな かったような気がします。ごめんなさい。
 フィリピンはこれくらいにして、次は「バリ」。正 直言って私にとっては、今回の旅の最大の目的地で した。あの観光用パンフレットに登場するような夕 陽をバックにした海の構図・・・・・・。まさし く、そうでした。感動しました。回想してもウット リするような夕陽の沈む海でした。でも現地の皆さ ん、お願いですから海辺でのしつこい物売りはやめ て下さい。
 バリには2日間の滞在。ここでは、ゴンドール研 究所を訪問し、JICA派遣の研究者の方々との懇談、 および施設の見学を行いました。施設については、 これまたJICA印ですからともかく、研究員の方々 はどなたも異国を転々としているまさしく生活する ために(逆に生活を犠牲にしているともおっしゃっ ていましたが)研究しているという方たちで、その 研究にかける情熱は、バリの暑さをも超えるほどで した。ただ自分たちの研究機材がすぐに日本から届 かないそうで、場合によっては数カ月も待たされる 状況で、とても苦労されているようでした。近々、 健康管理休暇なる長期休暇が予定されているとのこ とで、久しぶりの帰国を楽しみにしているご様子で した。どうぞ、現地での漁業の振興のためにご活躍 されることを祈念しております。一夜明けて、ゴン ドールから車で約半日をかけて、バリ中心部にある ベノア港というマグロの水揚げ施設を見学しまし た。ここでは、主に日本のスーパーマーケットでよ く見かける刺身用のマグロを水揚げしていました。 パネルで、水揚げからパックになるまでの工程を紹 介していましたが、なるほど、マグロちゃんは遠い 道のりをかけて日本人のおなかに入るんだなと変な 関心をさせられました。また港内の別のところで は、中国船籍の漁船が多数水揚げをしていました が、やはり船内での冷凍設備に問題(氷水で冷凍し ていた)があるようで、とても鮮度は語れないよう な有り様でした。
 振り返ると、フィリピンのマニラ中心部は、確か に大きなビルや多くの車が往来し、まるで東京にい るような錯覚に陥るほどの大都市というイメージが ありましたが、一歩、郊外に出ると、そこは今にも 崩れ落ちそうな家屋が点在し、天国と地獄のような 差が歴然とありましたし、一方、バリは、観光が中 心の単なるリゾート地というイメージで、まだまだ 発展途上なのだなあというのが全体的な感想でし た。
 HACCPの報告は(しないまま)専門家におまかせし、 最後に今回、外国旅費の工面や、渡航手続きをやっ ていただいた水産庁の関係者にお礼を申し上げ終わ ります。ありがとうございました。
(前 総務部庶務課人事係長   現 水産庁資源管理部管理課総務班庶務係長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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