中央水研ニュースNo.18(平成9年11月発行)掲載

【情報の発信と交流】
平成9年度第1回東北・中央ブロック長期漁海況予報会議報告
渡辺 洋

 標記会議は平成9年7月15、16日、本所講堂 及び特別、第1、第2、第3会議室において、18 県水試関係(釧路、函館、青森、岩手、宮城、福島、 福島相馬、茨城、茨城無線局、千葉、東京大島、東 京八丈、神奈川、静岡、静岡伊東、愛知漁業生産研、 三重、和歌山)、4水研(北海道、東北、東北八戸、 南西、中央)、水産庁研究部、水産庁沖合課、気象 庁海洋課、漁業情報サービスセンター、海洋資源開 発センター、全国沖合いかつり漁業協会の計81名 の参加者をもって開催された。
 始めに全体会議として熊野灘から道東海域の7月 から11月までの各項目の予報案の提起あった後、 海況、マサバ、イワシ類、イカ類の4分科会に分か れて討議した。その後、再び全体会議で修正案につ いて検討採択を行ったほか、関連事項について協議 を行った。

 今期の漁海況予報の骨子は以下のとおりである。
 熊野灘~常磐海域の海況については、黒潮流路と しては、その蛇行はほとんどの場合都井岬南東で発 生した小蛇行が遠州灘まで東進し、そこで蛇行規模 が拡大することによって形成される。7月上旬現在 小蛇行は認められないため、黒潮はN型基調で経過 し、房総沖では離岸する。黒潮内側域では、黒潮が N型基調の時は内側域は低温で経過し、また、潮岬 沖で黒潮が接岸傾向にあるときには潮岬からの暖水 波及が生じやすいとして、反流の顕著な発達はな く、概ね低めで経過するが黒潮流路の小規模な変動 により一時的な沿岸への暖水波及があるとして、平 年とあまり変わらないものとした。
 東北海域の海況としては、近海の黒潮の北限は35 ~36Nで推移する。黒潮系暖水は近海では今後 1~2ヵ月はやや弱勢、その後は平年並み。沖合で も平年並み。釧路南沖の暖水塊は持続する。親潮第 1分枝は三陸北部~襟裳岬近海にとどまる。第2分 枝の張り出しは38N付近まで。津軽暖流は平年並 ~やや弱勢になると予測した。
 マサバについては、来遊量は0歳魚及びⅡ歳魚以 上は前年を下回るものの、I歳魚(1996年級 群)は前年を大きく上回るため、今年度は三陸北部 海域にも漁場ができる見込みであるとした。しか し、近年は再生産率は年によって大きく変動してお り、加入水準が比較的高い年級群が出現するもの の、若齢魚から漁獲が集中するため親魚量の回復に は結びついておらず、資源は依然として低い水準に ある。
 マイワシの来遊量は前年を若干上回る予想となっ た。これはI歳魚の資源量が前年を大きく上回るた め、I歳魚以上の来遊量は前年を上回るが、O歳魚 の資源量が前年ほどには期待できないためである。 資源水準の低下とともに、北上回遊範囲の縮小が認 められることから、主漁場は仙台湾~房総海域とな り、道東海域への大規模な回遊は期待出来ない。
 カタクチイワシは来遊量は各海域とも前年を下回 る予想である。平成9年3月現在の資源水準は成魚 大型群(1995年級群主体)で前年よりやや高 く、成魚小型群(1996年級群主体)で前年を下 回っていると推定される。現在資源の主体となって いる1995年級群は1997年夏季以降寿命によ り大幅に減少し、今後主体となる1996年級群の 豊度は1995年級群を下回ると考えられるため、 来遊量水準は前年を下回ると考えられる。
 スルメイカは太平洋北上群の来遊動向からみて、 前年のような好漁とはならず、1993年並みの水 準であり、道南沿岸に主漁場が形成されるものとみ られている。魚体は若干小さめであろうとした。資 源水準としては中位で横ばい状態であるとされてい る。
 なお、本会議の中で最近のマイワシ資源減少に伴 う分布・回遊や成長・成熟の著しい変化を背景とし て、予測及び資源評価に関する定期的な研究会が必 要であるとの意見が出された。これまでも同種の要 望が出されていることから、今後予報会議に合わせ て年1回程度定期的に開催することとし、第1回目 として、本年12月の第2回予報会議に合わせてマ イワシを対象に研究会を開催することを申し合わせ た。

(生物生態部長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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