中央水研ニュースNo.18(平成9年11月発行)掲載

【研究調整】
平成9年度我が国周辺漁業資源調査中央ブロック資源評価会議報告
渡辺 洋

 標記会議は平成9年7月16日に本所講堂におい て、13水試(釧路、青森、岩手、宮城、福島、茨 城、千葉、東京、神奈川、静岡、愛知、三重、和歌 山)、4水研(北海道、東北八戸、南西、中央)、水 産庁、漁業情報サービスセンター、海洋水産資源開 発センターから計52名の参加者を得て開催され た。
 協議内容としては、マイワシ太平洋系群、マサバ 太平洋系群、ゴマサバ太平洋中部・北部海域群、カ タクチイワシ本州太平洋系群の4魚種を対象に資源 評価を行うとともに、漁獲可能量(TAC)設定の 科学的基礎となる生物学的許容漁獲量(ABC)を 算出した。ABCは資源を理想的な状態に保つ場合 (ABCα)、現状を維持する場合(ABCβ)、及 び資源を絶滅させない最大漁獲可能量(ABCγ) の3つのケースについて産出した。マイワシ、ゴマ サバ、カタクチイワシについては、本年3月に開催 した平成8年度中央ブロック資源評価会議で、1996年 の資源評価と1998年のABCの算定を 行っており、その後、資源量を再計算するだけの新 しいデータの蓄積や評価を修正すべき大幅な漁況等 の変化もないことから、3月時点のままとし、資源 評価表の記述の一部を次のように修正することで対 処することを提案し、了承された。
 マイワシ : 3~6月の漁況経過からコホート解析 により計算された1996年級の豊度は妥当と判断 されることより、コホート解析結果に基づく1996年の 評価が過大である可能性が高いとした部分を 削除。
 ゴマサバ : 資源評価結果に基づけば、現状の漁獲 水準はABCα、βの水準を上回っていることにな る。しかし、4月以降豊漁が続いていること、隣接 する太平洋南部海域でも資源は良好な状態にあると 判断されていることから、現在の漁獲が資源に悪影 響を与えているとは考えられないことを記入。
 カタクチイワシ : ABCαかABCβを上回って いることについて、現在は資源水準が高く、産卵資 源量水準も再生産関係から最大の加入量が期待でき る水準を上回っているとの説明を補足。
 マサバについては、本年3月の資源評価会議での 指摘に基づき、0歳魚を含めた資源の再評価とABC 再計算結果を含む新しい資源評価票と、各ABCの原案 を中央水研から提案し、審議の上了承され た。
 評価・調査手法についての問題点については、静 岡水試から最近のゴマサバ漁況からみて、漁獲対象 資源(主として0、1歳魚)の相当部分が潮岬以西 の海域から来遊する可能性が高いとの意見があり、 今後の資源評価に当たって関係水研との連携によ り、太平洋南部海域や東シナ海海域の資源動向を十 分に考慮することとした。
 調査連絡体制については、我が国周辺漁業資源調 査におけるデータ出入カシステム(FRESCO) の問題が討議された。生物データ入カ・登録法につ いて中央水研より説明し、平成9年度データの入力 促進を依頼した。また希望者に対して、実地に操作 演習を行った。また、青森水試から水研側でデータ 入力・登録のためのエクセルシート上のテンプレー トを作成し配布して欲しいとの希望が出され、水研 側で具体的に検討することとした。さらに、平成 7、8年度の生物測定データで、すでに中央水研に 送付されているものについては、今後順次東北ブロック 水試で測定され東北水研八戸支所経由で送付 された分を含め、水研側で入力・登録作業を行うこ と、ヘッダー項目の不明事項については、必要に応 じて測定機関に照会、協力を求めることを確認し た。
 ブロック資源評価会議は、全国評価会議の日程及 び漁況情報に基づく新規加入群の状況把握の便宜を 考慮して、来年度以降も7月上旬に第1回予報会議 と合わせて開催したい旨を中央水研からが提案し、 了承された。
 今回の資源評価会議で検討を通して、東シナ海及 び太平洋側のゴマサバ資源に海域間での関連が示唆 され、合理的かつ精度の高い資源評価を実施するた めには、海区ブロック間での連携が重要であること が明らかとなった。当面、生活史段階別分布・回遊 実態並びに年齢一成長・成熟関係などの生物特性に ついて既往の知見の整理を行い、適切な資源評価単 位の設定及び評価手法の検討を行うとともに、知見 の欠落部分については順次補完するための組織的 な調査・研究計画を検討・立案する必要がある。そ こで、全国資源評価会議においてゴマサバ資源評価 の高度化へ向けた海域間の連携の強化を提案するこ ととした。
(生物生態部長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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