中央水研ニュースNo.18(平成9年11月発行)掲載 |
【研究調整】 平成9年度内水面(中央ブロック)水産業関係試験研究推進会議の概要
杉山 元彦
平成9年6月10日及び11日の両日、標記推進会 議が長野県上田市で開催された。この会議は、平成 元年度の水産庁長官通達に基づき、内水面に関する 試験研究に携わる国公立水産試験研究機関間の相互 の連携強化を図り、内水面漁業振興に寄与する試験 研究を効率的に推進することを目的として、中央水 産研究所長の主催により、平成2年度から毎年開催 されている。 今回の会議には42都道府県の43公立水産試験研 究機関をはじめ、養殖研究所、水産工学研究所、水 産庁研究部研究課、同漁場保全課生態系保全室、全 国内水面漁業協同組合連合会、日本水産資源保護協 会、滋賀県立琵琶湖博物館及び中央水産研究所か ら、計81名が参加した。 会議では中央水産研究所長及び水産庁研究部長 (代理:研究課調整班長)の水産研究を巡る最近の 諸情勢の紹介を含めた挨拶の後、まず、中央水産研 究所から、平成8年度希少淡水・汽水魚類増養殖試 験研究連絡会議(希少魚会議)での「希少水生生物 の系統保存における遺伝的多様性の保全」に関する 論議の概要等、昨年度の推進会議をうけて実施、あ るいは検討した事項について報告した。 また、各試験研究機関に対して実施した、平成8 年度の試験研究結果及び平成9年度の計画に関する アンケート調査の結果を、中央水産研究所で取りま とめて報告した。その集計結果によれば、好ましい 河川像の解明等、生態系保全に関連する課題が増加 する傾向にあり、生態系保全に対する社会的な関心 の高まりに、水産研究機関が対応しつつあることが 伺われる。また、魚病に関する課題も多く、内水面 においても疾病が重大な問題となっていることを反 映している。一方、希少水生生物の保護に関する課 題も積極的に取り組まれており、生息条件の解明や 種苗生産技術等に成果が見られる。しかし、これら の研究の進展に伴い、生産した種苗を野外へ放流す る際の明確な指針がないことなどが、希少生物増殖 の新たな障害となっていることも明らかとなった。 いずれにしても、研究課題数は増加傾向にあり、限 られた人的・予算的研究資源でこれらに対応するた めには、国公立水産試験研究機関の間のさらなる連 携が必要と考えられる。 つづいて、水産庁研究課から行政改革の動きな ど、研究予算の動向や水産庁研究所の組織改革をめ ぐる最近の厳しい情勢について報告があり、その認 識を深めた。また、生態系保全室からは、ミヤコタ ナゴを例として、希少魚保護に関する環境庁等、他 省庁の活動の現状について紹介があった。このほ か、全国湖沼河川養殖研究会から平成8年度の活動 と9年度計画の報告が行われた。 また、本年度から当推進会議でも研究成果情報課 題の評価・分類実施することになった。協議の結 果、各公立水産研究機関から応募のあった研究成果 のうち、26成果を平成8年度の成果情報掲載候補 として採択し、それぞれの分類区分を決定した。 昨年度の推進会議で「希少水生生物保護に関する 研究の重点化及び連携・分担」を今回の中心議題と されたことをうけて、滋賀県立琵琶湖博物館交流セ ンター科長による、動物園・水族館における淡水希 少魚系統保存の現状に関する特別講演や、内水面利 用部及び日本水産資源保護協会からの話題提供の 後、論議を進めた結果、研究の重点化方向を①多様 性分析の推進、②多様性保全手法の開発、③天然水 域への希少種放流マニュアル確立、とすることを確 認した。また、その分担については、公立試験研究 機関が地域のニーズに応じた希少種を担当し、中央 水産研究所は全国的なレベルで減少を続けている種 を中心に、基礎的な研究を分担するべきとした。さ らに、連携を強化するために、中央水産研究所が他 省庁の動き等も視野に入れた、情報センターとして の機能を充実させることが求められた。また、情報 の流通効率を向上させるために、コンピューター通 信網の活用について検討を進めることで合意した。 なお、来年度の中心議題を「生態系の保全」ある いは「生物多様性の保全」とし、その論議を通じて、 内水面研究における国公立水産研究機関の間の連携 強化を図ることとした。 (内水面利用部長)
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