中央水研ニュースNo.17(平成9年9月発行)掲載

【研究調整】
平成8年度我が国周辺漁業資源調査中央ブロック資源評価会議
渡辺 洋

 本会議は、我が国が国連海洋法条約を批准し漁獲 可能量(TAC)制度が施行されることを前提に、 平成7年度に定められた「我が国周辺漁業資源調査 計画」に基づいている。基本的には、我が国周辺漁 業資源の適切な保存及び合理的な利用を図るための 資源診断・動向予測・最適管理手法の検討を行うと ともに、これに必要な基礎資料を整備することを目 的とし、その中で調査実施に当たり資源評価会議を 設けることとなっている。この会議はブロック毎に 開催する(全国6ブロック)ものとし、原則として 年一回3月とされている。内容はブロック水研が担 当水研となっている全ての評価群の資源評価、ブ ロック内の調査連絡体制の整備、評価・手法の改善 等の問題点の取りまとめ等を行うとしている。この 評価群の資源評価とは調査対象魚種の漁業の現状、 資源の現状(資源特性、資源量推定、資源診断)及 び資源管理方策(資源管理目標α・β・γ)につい てとりまとめることであり、評価票と呼ばれてい る。その中でも特に資源管理方策、つまりTAC制 度に関連し、海区水産研究所が行わなければならな い生物学的許容漁獲量(ABC)の算定に力点が置 かれており、資源の維持に理想的水準を保つ場合 (α)、現在の資源水準を維持する場合(β)、資源 を生物学的に最小限度維持する場合(γ)の3ケー スについて検討することとなっている。中央ブロッ クではマサバ、マイワシ、カタクチイワシ、ゴマサ バが調査対象魚種となり、その資源の評価及びABC 算定等の評議が行われている。なお、本会議の構 成はブロック内水研及び参画機関(都道府県水産試 験場等)であり、ブロック水研所長が召集すると なっている。また、会議の結果等は資源評価票及び ブロック報告書に取りまとめ、全国会議に報告する ことになっている。
 平成8年度の我が国周辺漁業資源調査中央ブロッ ク評価会議は3月25日、13時より17時まで、 11水試(釧路、青森、宮城、福島、茨城、千葉、 東京、神奈川、静岡、愛知、三重)、3水研(北海 道、東北八戸、中央)及び水産庁の担当者41名の 参加により、本所講堂で開催された。議題としては 資源の評価と管理方策の検討であり、太平洋中・北 部海域のマサバ(大平洋系群)、マイワシ(太平洋系 群)、カタクチイワシ(本州太平洋系群)、ゴマサバ の4魚種が評価対象となった。なお、事前に中央ブ ロック各県水試及び関係機関に各魚種の評価票 (案)を送付し、意見を求めたが、関係水試からの 特段のコメントはなかった。
 最初に中央水研から、今年度より変更のあったABC の3通りの算定手続きについての解説があった 後、各魚種の資源評価票について説明が行われた。 主な討議内容としては、マサバについては、コホー ト解析により資源量を求めた後、近年の再生産関係 (産卵量当たり加入尾数:SPR)に基づいてABC算定を 行っているが、資源評価が1歳魚以上に なっており、最近はその漁獲が増えており、O歳魚 を含めた解析が必要との見解が出された。これに対 して当方もその必要性は認識しており、現在過去に さかのっぼってO歳魚漁獲量のデータを集計中であ る旨回答し了承された。また、O歳魚をはじめとす る若齢魚の漁獲規制が管理上有効であり、その旨を 特記事項として記載してはどうかとの意見が出さ れ、議論の結果そのようにすることとなった。マイ ワシ及びカタクチイワシの評価票については、特に 意見はなかった。ゴマサバについては、最近静岡県 まき網を中心に漁獲量が増加しており、プロダク ションモデルから期待される余剰生産量を上回って いるが、その背景には加入量の増加があり、直ちに 乱獲とみなす必要はないとの見解で一致し、その旨 を特記事項に記載することとした。
 また調査連絡体制等の討議があり、特に、新しい データ収集・利用のための新システム(名称:FRESCO) についての意見交換が行われた。最後に 平成9年度からは全国評価会議は7月に開催する予 定であり、本会議もそれに合わせて中央ブロック第 1回予報会議(7月)に引き続き開催する旨提案 し、了承された。
(生物生態部長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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