中央水研ニュースNo.17(平成9年9月発行)掲載 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
【研究調整】 東京湾油流出事故現地連絡協議会の設置と活動について
小林 時正
平成9年7月2日、東京湾内の当水研より直線距 離で約12㎞、研究所の6階からも見える位置でタ ンカー「ダイアモンドグレース」が座礁しました。 このダイアモンドグレースによる流出した原油は当 初約15,000キロリットル(ナホトカ号の数倍)と 報道され、予想される被害の大きさに緊張が走りま した。 江戸前の東京湾での漁業生産は平成7年には約 20,000トンあり、その大半はアサリとバカガイが占 め、マコガレイ、イワシ類、マアナゴ、スズキ、コ ノシロ等の魚類が約6,300トン、シャコが700トン、 残りは海藻類、たこ等です。これらの漁業資源への 影響がまず心配されました。 中央水産研究所では、同日午後2時には所内で緊 急の会議を招集し、当面の対応策を検討しました。 水産庁からも迅速な指示があり、水産工学研究所所 属のたか丸による原油拡散域とその周辺域での採水 調査を当日の2日と3日に実施したほか、現地連絡 協議会を設置するための素案を即日に作成し、関係 する都県に呼びかけました。その後も、水産工学研 究所の協力を得て、たか丸による環境への影響調査 を6~18日まで行い、戸部船長以下乗組員の協力 のもとに大変貴重な資料を採集することができまし た。 流出した原油の量は、その後、当初の報道の10分 の1の1,500キロリットルに訂正され、原油処理は 海上保安庁、都県の試験船・監視船、教育機関や民 間船等多くの船舶によって実施されたことから短期 間で終了し、第三管区海上保安本部内に設置されて いた「対策本部」を11日に解散しました。また、東 京湾内で試験的に漁獲された魚介類について漁業協 同組合が中心になって食味試験を行い「問題なし」 の結果が得られ出荷しました。市場での価格にも変 化は見られませんでした。これにより7月14日に 操業を全面的に再開したところです。 しかし、これですべて終わったということではあ りません。新聞報道によれば約174キロリットルの 油処理剤が散布されており、油の直接的被害だけで なく油処理剤による間接的な影響も心配されていま す。海洋生態系にどのような影響があったか、それ とも無かったのか、研究サイドとして明らかにして おく必要があります。流出事故があってから2週間 経た7月17日、水産庁研究部、東京都水産試験場、 神奈川県水産総合研究所、千葉県水産試験場それに 中央水産研究所が参集して、東京湾油流出事故現地 連絡協議会を開催しました。協議の結果、「現地連 絡協議会」としては7月24日に、「現地連絡協議会」 の結果概要をそれまでの調査結果を含めてプレスリ リースしました。これから標本の収集、分析、解析 と進んでいきますが、これからの調査結果をみなが ら第2回の現地連絡協議会の開催日を決めていくこ とにしております。 (企画調整部企画調整科長)
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