中央水研ニュースNo.17(平成9年9月発行)掲載

【情報の発信と交流】
最近の中央ブロック長期漁海況予報会議から
岡田 行親

 長期漁海況予報会議は、水産庁が実施する漁況海 況予報事業のうち、海区を対象に漁況海況情報を収 集、分析して4~6ヵ月先までの主要魚種の漁場形 成の時期と場所や来遊の豊度などの漁況や、漁況に 大きな影響を与える海流の動向や水温分布などの海 況を予測する場である。作成された予報は漁業関係 者をはじめとして一般に広報され、漁業等の計画的 操業のための基本情報として活用されるとともに、 我が国周辺海域の主要な水産資源の状況を継続的に 把握する上でも重要な役割を果たしてきた。
 中央ブロックにおける長期漁海況予報会議は、正 式には「太平洋北部イワシ・サバ長期漁況海況予報 会議」という。中央水研生物生態部が事務局となっ て北海道~和歌山の各水産関係試験研究機関、北水 研、東北水研、漁業情報サービスセンター等で構成 され、毎年度7,12,3月の3回、向こう4ヵ月間 の太平洋北部のマイワシ、カタクチイワシ、マサバ (ゴマサバを含む)の資源動向及び漁況と海況を予 報している。予報は漁業情報サービスセンターを通 じて直ちに広報されるとともに、「中央ブロック長 期漁海況予報」としても刊行されている。
 最近の資源状況はマイワシでは1988年以降一貫 して減少傾向が続いており、現在の資源水準は著し く低い。また、資源の回復が期待されるマサバも、 最近再生産関係に好転の兆しがみえるものの、若齢 魚に対する漁獲圧が強いため、成魚を含めた資源全 体ではまだ低い水準にとどまっている。したがっ て、かつての主要漁場であった三陸海域や道東海域 を中心に、予測された漁況は前年を下回る極めて厳 しいものになっている。一方、カタクチイワシは 1988年以降資源量が増加し、現在資源は高い水準 で横這い傾向にあり、マイワシやマサバとは好対照 を示しているほか、ゴマサバの漁況も好調である。
 平成9年1月から我が国でも漁獲可能量(TAC)による 資源管理制度が導入されたことに伴い、 長期漁海況予報の役割とスタイルにも変化が生じて いる。中央ブロック長期漁海況予報では、これまで (1)来遊量、(2)漁期・漁場、(3)魚体、(4) 漁獲量の4項目を予報してきた。しかし、漁況予報 における一方的な漁獲量の予測は漁業者や漁業管理 者に混乱をもたらす恐れがあるとの観点から、TAC 対象種であるマイワシとさば類の漁獲量について は平成8年度第2回予報会議から公表する予測項目 からは除くこととした。また、カタクチイワシにつ いても関係機関の協議により同様に取り扱うことと した。海域別の漁獲量の予測は各都県地先の漁業現 場においては、関係者に対して漁況の見通しを具体 的に説明する上では不可欠の情報であるとともに、 TACを管理する上でも重要な情報である。そこ で、中央ブロック長期予報会議では、会議のなかで は海域別の漁獲量の見通しについて来遊資源の動向 を踏まえた議論を行い、関係機関で一定の共通認識 を得ておくべきことを申し合わせた。また、平成9 年度から漁海況予報事業関係の都道府県に対する補 助金の費目が変更になるとともに、これまで補助金 により実施されてきた沖合定線調査が「我が国周辺 漁業資源調査」における委託事業に変更になった。 これらは、最近の厳しい財政状況のなかで、漁海況 予報事業の継続と拡充を図るための措置であり、中 央ブロック長期漁海況予報会議も、開催時期や回数 は従来どおりとすることを関係機関で確認した。し かしながら、従来、中央ブロック水産試験場の持ち 回りで開催してきた第2回予報会議(12月)につい ては、平成9年度以降当面は中央水研(横浜)で開 催することとし、今後の開催方法については、あら ためて協議することになった。
 TAC体制下における漁況海況予報には、漁業の 計画的操業のための情報としてだけではなく、資源 管理のための基礎情報あるいは実際の漁業をコント ロールする管理手段そのものとしての役割が期待さ れている。この期待に答えるため、中央ブロック予 報会議としては、今後とも、運営方法、予測の内容 と形式、予測技術の向上などについて一層の検討と 改善を加えていく予定である。
(生物生態部資源生態研究室)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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