中央水研ニュースNo.17(平成9年9月発行)掲載

【研究調整】
エッ!水産と農業の研究連携ってなに?
-水産と農業の経営経済研究の連携-
家常 高

 経営経済部が、平成8年度の農業経済(平成9年 3月7日:農業総合研究所主催)と総合農業(平成 9年3月11~12日:農業研究センター主催)の 各試験研究推進会議に初めて参加しました。農業分 野では、地域農業試験場の総合研究部に経営関係の 研究室が配置されています。この各地で進められて いる経営研究を調整するために推進会議は、重要な ものになっています。水産から農業の推進会議に参 加して研究の連携をはかることは、研究者数が少な い経営経済部にとっては非常に重要であると考えて います。ここでは、経営経済部が農業の推進会議に 参加するきっかけと、農業との連携をどのように進 めようとしているかについてお知らせしたいと思い ます。
 皆さんご存知のように、平成7年11月から平成 9年1月にかけて、農林水産技術会議による水産研 究所の研究レビューが、3次にわたって行われまし た。その2次レビユー(平成8年7月17~19 日)において、レビュー委員の方から、「将来の水 産業のグランドデザインにも関連し、漁業経営の健 全化の視点から経営・経済研究の新たな展開を期待 したい」という指摘を受けました。これに対して、 以下の5点を押し進めていくことを表示しました。 ①「水産業の経営安定化と地域の活性化」のための 研究を経営経済部の優先度の高い研究として強化す る。②農業場所との定期研究会等の開催、人事交流 等重点交流・連携を推進する。③農業研究センター 主催「総合研究推進会議」及び農業総合研究所主催 「農業経済試験研究推進会議」に中央水産研究所が 構成機関として参画する。④当面、農業場所と経 営・経済研究に関する懇談会を設置し(将来は連絡 会等に昇格)、経営・経済研究の資質の向上を図り、 専門研究者の育成に努める。⑤プライオリティの高 い課題の優先化・特化を図ると共に、中央水産研究 所の限られた経営・経済の研究資源を効率的に活用 する等です。
 これらのうち、幾つかのものは既に実行に移して います。①「水産業の経営安定化と地域の活性化」 を重点的研究に据え、研究を進めるようにしまし た。②農業関係機関との定期研究会の開催や人事交 流を通しての連携の強化を目指して、農業研究セン ター、農業総合研究所、森林総合研究所、中央水産 研究所の経営部門の関係機関が一堂に会する「農林 水経営経済研究情報交換会」を発足させ既に2回実 施しました。昨年の暮れには、中央水産研究所の多 くの方の協力を得て当研究所でも交換会を開催しま した。③また、農業研究センター、農業総合研究所 での経営経済関係の推進会議に構成機関として参加 して、農林水の研究の連携を強化しました。
 環境問題、資源問題、都市との交流等のように農 林水が横断的研究体制をとることで、新たに研究推 進がはかられる重要な課題が多くありますが、今回 はそのための連携の場が形成されたと思います。
 我々はこの連携の場に、期待するものが多くあり ます。まず長期的には、レビューで指摘された「将 来の水産業のグランドデザイン」づくりのための相 互協力と補完が考えられます。水産業独自でグラン ドデザインを構築することは研究としても不十分な ものになりかねません。生態系問題についても農林 との関係を抜きには考えられないわけで、この連携 の場を利用して、「農林水のグランドデザイン」が 論じられることが期待されます。
 短期的には、プロジェクト研究での協力が考えら れます。現在も技術会議事務局プロジェクト「環境 と貿易」で、消費流通研究室が「水産物貿易の変動 が環境問題に与える影響に関する総合評価」をテー マにして活躍しています。さらに、研究手法の相互 適用を進めることが期待されます。水産物は、持続 的な資源利用を実現しなければ資源枯渇を招くとい うおそれもあり、資源管理面における研究蓄積が豊 富です。これらの成果は、水産以外の分野に対し誇 れるものであり、資源研究の基本的考え方を示すこ とができます。この伝家の宝刀である資源研究を べ一スに世界の水産物需給モデル等を構築したいと 思ってもみますが、この様なときに農林部門からの 研究支援が得られれば心強いです。
 農林水の連携は、この他にも多くの効果が期待で きます。また連携の強化には時間をかけて着実に進 めていくことが必要と考ています。
(経営経済部長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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