中央水研ニュースNo.16(平成9年4月発行)掲載

【情報の発信と交流】
一般公開'96を開催
橋本 久之亮

 中央水産研究所は「海からのおくりもの」をテーマに、 平成8年度の一般公開を11月23日(土)に開催しま した。前回の生物分野(生物生態部・生物機能部)に続 き今回は、利用加工分野(利用化学部・加工流通部)が メインとなって、毎回参加の企画調整部とともに、全所 内の協力を得て取り組みました。
 主な公開内容は次のとおりです。
1.展示関係:テーマ展示(写真)①海からのおくりもの
②品質評価
③研究紹介
2.講演会(写真):①海洋微生物の新しい生物機能を求めて
②なぜ水産物の輸入が増えるのか
3.漁業調査船蒼鷹丸公開(写真)
4.インターネット体験(写真)
5.加工の歴史(写真、協力:神奈川大学日本常民文化研究所)
6.タッチプール(写真)
7.顕微鏡による観察
8.ビデオ放映

◇メインテーマ「海からのおくりもの」は、①日本の水 産加工品②キチン・キトサンの利用③魚介類の有効 成分・非食品部位の利用④海藻・アルギン酸の利用 ⑤冷凍すり身の利用⑥いろいろな加工品(家庭で手 軽に食べられる刺身パック製品等)などを来訪者にわか りやすく、パネルと各種製品等の展示を行いました。そ して、多くの方が、成分であるアルギン酸の利用(アイ スクリームなどの増粘剤、スピーカーコーン紙、・化粧品 等)や、カニの甲羅などからも沢山の製品(タオルなど の繊維製品、人工皮膚などの医療用品、健康食品等)が できることに新たな認識を持たれたようです。また、6 m以上もある昆布の実物に触れ'ぬめり'と独特の香り に包まれていました。

◇品質評価コーナーは、マグロの鮮度判定、かまぼこの 物性測定、エビやバラの花の匂いの強度測定など、簡単 な趣向で実際に体験をしてもらいました。子供たちは物 があると直ぐ触って自分で試して満足し、大変興味を示 しました。

◇講演会は、大人を対象に2課題を30分ずつ講演しま した。とかく難しくなりがちな内容を、分かりやすく説 明しようとする演者の努力がありました。企画によって は子供を対象に、親子で楽しめる講演会もよさそうです。

◇漁業調査船蒼鷹丸の公開は、今回も船内の所定のコー スに大勢の家族連れが訪れました。今後とも来訪者の 二一ズに応えるには、研究所と桟橋間の送迎バスを増便 することが、可能な限り求められています。

◇コンピューターの体験は、当研究所のホームページを はじめ、デジタル水族館・おさかなクイズ・記念撮影 (プリントクラブ)などの構成により、さながらマルチ メディアの雰囲気に包まれました。インターネットの体 験には、初心者の方の参加も多く見受けられそれなりに 評価されたようです。現在ではインターネットも一般に 普及が進んでおり、今後は、さらに内容の工夫が必要に なって来ています。

◇タッチプールは、当研究所環境保全部の協力により、 横須賀庁舎裏の磯にて採取された15種類の水棲生物を 展示しました。“ふれてみよう”をキャッチフレーズに 子供たちから大変喜ばれました。思わず可愛がり過ぎて、 生き物を手に持ち続けてしまう行為に対して、同じ年代 の子供たちから「かわいそう」との声が上がっていたこ とは、命あるものを大事に思う気持ちとして見逃すこと はできません。

◇加工の歴史は、神奈川大学日本常民文化研究所の協力 を得て、①民俗関係(結納品等)②古代、中世の木簡 (かつお節製造に関する出土品の模型)③近世古文書 (俵物…いりこ、ふかひれ)④かつお節製造方法(日本 山海名産図絵)⑤かつお節製造道具一式⑥かつお舟の模 型。これらの展示に加えてビデオによる、日本の味かつ お節・赤道直下の一本釣り・沼津の干物づくり、などの 放映を行いました。

 幸い今回も好天に恵まれて、幼稚園児から70才代の 広範囲の方々、合計1,066名が来訪されました。年 代構成では40才前後の家族連れが、全体の78パーセ ントを占めました。来訪者数は年々増加していますが、 毎回、初めての参加者の方が圧倒的に多く、これからは 少しでも多くの方に、再来して頂けるような公開にする 必要を感じています。

(前情報資料課長 現水産庁漁場保全課課長補佐)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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