水産研究に関する研究情報等について
【情報の発信と交流・研究室紹介】
水産研究に関する研究情報等について
小川 嘉彦

 中央水産研究所が行っている水産研究に関する研究情報等の収集及びそれに基づいて水産研究官が 行う分析研究の目的等については、本ニュ-スの第13号と第14号に詳しく紹介されていますので、今 回は第Ⅱ期(平成8年7月から9月の間)に水産庁各研究所から寄せられた研究情報を整理した結果を 前号に倣って、表として纏めたかたちで紹介させて頂きます。
 今期は10月29~31日の平成8年度水産業関係試験研究推進会議(以下「推進会議」と言う。)を控 え、一つには重要研究課題(素材)として、前年度推進会議で水産研究官が練り上げを行うよう付託 された「水系からみた農林水産生態系」及び「有毒プランクトンの発生予察」に関する情報の提供を 受け、これを整理するとともに、推進会議に向けて課題化のための一層の練り上げに努めました。ま たもう一つには推進会議において連携・調整を要する事項について資源管理・海洋環境・資源増殖の 各分野別に整理しました。
  これらはいずれも、それまでに寄せられた研究情報や水産研究官が日常的 に行っている情報収集及び分析研究の結果と併せて、推進会議前に水産庁各研究所には事前検討資料 として送られ、推進会議の論議の素材としても活用されました。
 なお、第Ⅲ期(10月~12月)については、推進会議における協議の結果を踏まえながら、海洋生態 系研究と最近の科学技術政策の動向と研究対応についても、情報の提供をお願いするとともに、水産 庁各研究所においてどのような取り組みがなされているかについてもフォロ-アップに努めていきた いと考えています。また、その分析結果等については引き続きこのニュ-スにも報告していく予定で す。

(水産研究官)

水産研究に関する研究情報の分析と今後の対応
平成8年10月(8月~9月)

 分析の方向分析研究の内容今後の対応
重要研究課題(素材)の企画に関すること水系からみた農林水産生態系 ①水産で実施すべき課題と核になる課題の決定
②水産庁研究所における研究実施の可能性の分析
③「水系」の課題化に係わる情勢の分析と素材の取り扱い方針
①「河川等を起源とする影響」,「魚付き林の生態的役割」、「沿岸構造物の効果」について、緊急 性・重要性・実施可能性を検討
②各研究所における沿岸・陸水生態系の観点からの研究推進の可能性を検討
③農林他場所、技術会議、水産海洋学会等における情報の分析と課題化のための方策を検討
①推進会議での検討結果を考慮し、課題化素材として組立て、研究課へ提出する有毒プランクト ンの発生予察技術
有毒プランクトンの発生予察状況 ①具体的な研究計画の設計 ①特徴:有毒プランクトンによる毒成分が二枚貝だけでなく多の生物も含めた生態系全体へ与 える影響を評価
②プロ研課題の構成:「Alexandrium属プランクトンの生理・生態解明」、「Alexandrium属プ ランクトンと他の海洋生物との相互作用」、「二枚貝における麻痺性貝毒の蓄積・代謝・分解 機構の解明」
①平成10年度向けプロ研課題として研究計画案を作成。推進会議での検討をふまえ、再整理し 、研究課へ提出する
推進会議において連携・調整を要する事項 資源管理分野 ①漁業情報に依らない現存量の推定法の導入
②資源評価・解析手法の高度化・迅速化の検討
③海洋環境変動の資源変動への影響評価
①計量魚探調査、面積密度法によるトロール調査、卵数法の欧米での実施例の分析と導入の問 題点を検討
②生物学的管理基準やABC・TACの算定方法の欧米での実施例の解析
③資源の短期及び中長期変動における海洋変動の関わりについて研究集会、文献等を通して情 報収集し要因を解析
①推進会議部会で工学研究分野との連携・協力を確認
②推進会議部会で導入の検討及び基盤部門による研修会の実施
③部会の生態系研究の中で検討。海域情報を併せて今後も事例解析を継続海洋環境分野
海洋環境分野 ①海洋環境データの収集・管理・流通方法の検討
②海況予測研究の将来方向の検討
③地球環境・海洋生態系研究の動向把握
④海区の動向の把握
①海洋環境データの収集・管理・流通体制改善の基本構想と具体化に向けてのプロセス のとりまとめ
②TAC制度のもとでのデータ同化を用いた数値モデル研究の重要性の指摘と課題化素材 の練り上げ
③地球環境研究・海洋生態系研究の推進方向と研究環境整備の方向の分析
④海区における自然現象、社会経済上の情報の整理と研究ニーズ・シーズの分析
(1)改善に向けて、「海洋環境調査部会」等で具体的に対応
(2)海洋生態系研究の推進方向の分析を継続
(3)海区のトピックス等の情報収集とニーズ・シーズの分析を継続
資源増殖分野 ①採集器具の漁獲効率向上と標準化についての検討
②研究成果広報活動の効率化
③生物多様性条約と資源増殖分野における研究との係わり
①採集器具の流体力学的特性の解明や生物の行動解析等から採集器具の採集効率の向上 を図り、標準採集器具の開発と利用方法のマニュアル化を検討
②「研究所ホットライン」応用・普及につながる平易な内容を企画(執筆分野の範囲拡 張、連載形式の変更等を検討)
③生態系研究への分子生物学の導入方法の検討
①推進会議部会でこれまでの調査概要を報告し、今後の研究を進めていく上での問題点 を検討
②推進会議部会で、内容改善策について、専門分野別協議事項として検討
③推進会議部会での共通協議の中で検討


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