【研究調整】
平成8年度我が国周辺漁業資源調査実施に関わる中央ブロック担当者会議報告
渡辺 洋

 標記の会議は国連海洋法条約の批准に関わるTAC制度に絡み、平成7年度から始まった我が国 周辺漁業資源調査を円滑に進めるため、水産研究所と水産試験場等の担当者の協議の場として位置 づけられ、各ブロック水産研究所長の主催により開かれている。
 本年度の中央ブロックの会議は平成8年7月17日、当水産研究所講堂において、千葉、東京、 神奈川、静岡、愛知、三重県の6水産試験場等、水産庁資源課、水産研究所の担当者計34名の参 加により開催された。内容としては、まず始めに従来の魚種別系統群別調査内容の確認が行われ、 平成7年度調査に準ずること、必要に応じて標本船調査を加えることが承認された。次に新規調査 計画の検討と確認が行われた。委託調査追加配分の説明の後、ゴマサバ関係の問題が討議された。 これは現在マサバとゴマサバが統計的に区分けされておらず、一方生物学的許容漁獲量の算出にお いて、マサバとゴマサバを分けるよう指示があったことに基づいている。しかし両者は特に幼魚段 階では極めて類似しており、分離する難しさがある。調査目的としては水揚量調査におけるマサバ とゴマサバの仕分け、及びゴマサバ生物測定データの収集であり、本年度計画としては、
マサバとゴマサバに仕分けた漁獲量調査、生物測定調査、
過去に遡っての漁獲量、生物測定データ(特に体長組成)の整理、
ゴマサバ判別マニュアルの実地使用による実用性評価と改良のためのデータ収集を実施することとなり、判別マニュアル作成のワーキンググループに積極的に参加すること
が確認された。なお、本事業には東京及び愛知を除く4県が参加協力することとなった。
 また、今年度から始まるEPM(Egg Production Method )予備調査関係の討議が行われた。E PMとは採集卵、稚仔から単位表面積当たり1日当たり平均産卵数を求め、これを全産卵場、全産 卵期に引き伸ばして1産卵期中の総産卵量を推定する。それにより雌1尾当たり1産卵期中の平均 産卵量から成熟雌の数を計算し、成熟雌の割合から資源量を推定する方法である。EPM適用のた めの技術的課題解決のため、マサバ及びマイワシを対象にケーススタディを行うこととなり、計画 としては
年齢別生殖腺指数の季節、海域別変化の把握(過去に遡りデータ解析)、
親魚パラメーター推定のための予備調査の計画と実施を柱に、当面の産卵魚採集方法の検討、バッチ産卵数( 1回当たり産卵数)の推定及び産卵周期の推定と魚体サイズ変化の把握等を行うこと
を申し合わせた。
本年度の計画としてはマサバ及びマイワシを対象として①及び②の一部を実施し、次期産卵期 へ向けて計画策定をすることとなった。また、千葉、静岡を中心に東京都を除く5県が参加協力す ることとなった。
 最後に本調査におけるデータ収集と利用のための新システムの現状について報告があった。それ によると、
水産研究所のワークステーションが現在セットアップ完了状態に近く、試験運用は もう少しで終了する(7月25日から本運用となる予定であったが、現時点ではまだ動いて いない)。
試験運用については、インターネット系の作業と本事業の主眼であるデータベース 関連作業(業務ソフトによるデータの登録と削除)があり、インターネット系は殆どの水試で OKとなっているが、データベースは終了したのが半数程度である。
本運用について、7月25日以降は正規のデータベースに登録されてしまうので、 試験をする場合には事前にこのシステムを管理している漁業情報サービスセンターに連絡する 必要がある。パスワードの管理等運用開始に伴う細かい指示については追って同センターから 連絡がある旨述べられ、若干の討議が行われた。なお、最悪の場合を想定し、平成7年度と 同様に、必要最小限のデータはフロッピーディスクまたは帳票で提出して貰うこと
が確認された。
 以上で協議内容の報告であるが、冒頭において当会議は水産研究所と水産試験場との協議の 場であると述べた。しかし、実質的には当水産研究所の一方的な意見の集約の場となり、十分な 協議が行われたかどうかといった点になると疑わしい。今後、真の協議の場となるよう努力して いきたい。

(生物生態部長)


You Watanabe
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