【研修と指導】

東京水産大学との「連携大学院」方式による連携について

中野  広
中央水産研究所は、平成8年4月1日に東京水産大学と「東京水産大学大学院の教育研究指導等への協力に関する協定書」を締結し、いわゆる「連携大学院」方式による東京水産大学と連携をすることになりました。本稿では、「連携大学院」ができるまでの経緯、背景、および「連携大学院」の組織について報告します。

1.経緯
平成6年3月に東京水産大学から中央水産研究所へ「連携大学院」構想についての提案がありました。その後、この提案について、東京水産大学をはじめとして、水産庁研究課や農林水産技術会議事務局との打ち合わせを行ってきました。その結果、農林水産技術会議事務局長、林野庁長官、水産庁長官が定めた「国立大学大学院教育研究指導等協力実施要領」に従って「連携大学院」による連携を実施することとなり、水産庁長官との協議を踏まえ協定書を締結したところです。また、このため東京水産大学学長から中央水産研究所長宛に併任教官の推薦依頼があり、これに対して中央水産研究所長から東京水産大学学長宛に3名の併任教官の推薦を行い、過日、東京水産大学から併任教授2名、併任助教授1名が発令されたところです。なお、この「連携大学院」には養殖研究所も参加しています。

2.目的
 「つくり育てる漁業」を振興するためには、水産生物学、遺伝生化学等の先端的技術及びマリンバイオテクノロジーを活用した技術に基づいて各種の事業を実施することが一層必要となっています。また、このための人材育成が重要な課題となっています。そこで、東京水産大学は、資源育成学科専攻のバイオテクノロジー関係学科及び大学院を強化するために、従来から東京水産大学大学院が実施してきた教育研究だけでなく、これらの分野において多様な研究実績と人材を有している中央水産研究所及び養殖研究所と共同研究・研究体制を深めることによって、本専攻を強化し、次世代の有為な若い人材を育てようとするものです。これに対して、中央水産研究所は、所の研究業務に支障が起きない範囲で大学院教育に参画し、併任教官1名につき1名の大学院生を受け入れることにしたものです。

3.組織体制
資源育成学専攻には、東京水産大学大学院が教育を実施する水産生物学、生物生産学、遺伝生化学の専攻分野の他に水産生物機能学と魚類生理機能学が設けられます(図1)。このうち、水産生物機能学は中央水産研究所が、魚類生理機能学は養殖研究所が担当することになりました。中央水産研究所が担当する水産生物機能学の授業科目は、海洋生物細胞制御工学、深海微生物学及び海洋生物工学からなり、授業内容としては次のようなものとなっています。
海洋生物細胞制御工学:魚介類の細胞分化、機能及び発現調節についての解明。魚介類の細胞の大量培養システムの開発
深海微生物学:深海に棲息する好圧細菌や超高熱細菌等の深海微生物の特徴、これらの細菌より有用な遺伝資源の開発法
海洋生物工学:汚染物質の魚介類に与える影響を生理・生化学、病理学的検知よりの解明と汚染物質の影響を事前に評価する生物検定法の確立

 以上のように、東京水産大学との「連携大学院」についての協定が結ばれ、既に、併任教官は6月には平成9年度の大学院学生の募集のためのガイダンスに出席するなど実行に移されています。今後中央水産研究所は、この「連携大学院」方式による東京水産大学との連携の強化に努めたいと考えていますので、ご協力をお願いするものです。

   (企画調整部企画調整科長)