中央水研ニュースNo.14(平成8年10月発行)掲載 |
【情報の発信と交流】
研究室紹介-海洋生産部物質循環研究室
佐々木 克之
海洋の生産力は様々な食物連鎖の結果として現れるものであり、 この問題をとくに低次生物生産における物質循環の立場から解明することが 当研究室の課題である。現研究室の前身が発足した1970年代から80年代半ばまでは、 内湾や干潟の窒素やリンの循環を扱い、富栄養化による被害防止のために削減すべき 窒素やリンの負荷量を定量的に示したり、干潟が生物生産のみならず重要な浄化機能を 持っていることを明らかにしてきた。80年代後半からは、低次生産研究室の前身の 研究室との共同により東京湾の物質循環にはこれを担っている生物の特徴(種類、 サイズなど)が大きく関与していることを明らかにしたことを契機に、生態系の 特徴と物質循環の関連を取り上げるようになってきた。同じ時期に地球環境問題が 重要課題となってきて、とくに炭酸ガスが地球温暖化と関連していることとの関連で 海洋における炭素循環が重要な課題となってきた。このような社会の要請の変化に伴い、 酸素や窒素の循環と収支を解明するためのボックスモデル解析法、懸濁態および溶存有機態物質 分析、沈降粒子把握のためのセディメントトラップ法や堆積速度測定法、光合成や動物プランク トン生産量および摂食速度測定など分析・解析法を導入してきて、現在では全炭酸など炭酸系物 質分析の精度向上に取り組んでいる。
1996年7月現在取り組んでいる課題と主な分担責任者は以下のとおりである。
当研究室の主要に取り組んでいる問題を図式化したものを示した。 右側は取り上げる課題を示したもので中央が当研究室の分担であるが、 研究の展開においては右側および左側の問題を取り上げざるを得ず、 上記に述べたように変動研、低次生産研との共同研究のウエイトが高い。 図の中央は論文作成までの必要事項を示したが、先に述べた以外には、 水産庁とNASDAとの共同研究推進が図られる現在はリモセン利用に関わる ことが重要となり、またどうしてもモデル利用が重要となってくると考えている。 また、当研究室は3人体制であり、上記の課題は一般的に言って多すぎる。どのよ うに合理化して論文を書く余裕を作り出すのかがひとつの重要な課題となっていて、 現在は変動研、低次生産研と観測のみならず、分析、解析、事務的な問題も含めて アドバイス、相互やりくりでカバーしている。
Katsuyui Sasaki
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