1.経済調査を行う機関・団体の情報交換会
情報交換会は水産庁企画課が主催する会議で、水産経営や経済調査を行っている機関・団体が集まり、水産経済調査の情報交換のための会議である。本年は平成8年4月9日に全国漁業協同組合連合会の会議室で行われた。
今回の参加者を分野別にみると、行政部局からは水産庁企画課、沿岸課、協同組合課、統計情報部の動態統計課、水産統計室、業界団体として全国漁業協同組合連合会、大日本水産会、信用機関として農林中央金庫、農林漁業金融公庫、漁業信用基金協会、関係団体として日本水産資源保護協会、海外漁業協力財団、魚価安定基金、民間から漁協経営センタ-等が、研究機関として中央水産研究所経営経済部が参加し、合計37名が参加した。 中央水産研究所経営経済部は、いずれとも密接なつきあいがあり大概の調査は知っているつもりでいたが知らない調査事業もあり、また、行政や業界団体から水産研究所に対する研究ニ-ズも聞くことができた。2.TAC導入と漁業管理問題
交換会は、水産界の経済情勢の報告と各団体・機関の経営・経済調査の概要報告及び意見交換で構成されている。経済情勢報告として水産庁企画課の弓削主席企画官から「国連海洋法条約について」、中央水産研究所から「沖合漁業の今後」の報告を行った後、各団体、機関が行った経営経済調査の概要報告と意見交換を行った。
弓削企画官の報告では、海洋法条約の水産関係の項目について「沿岸国は200海里を越えない範囲で排他的経済水域を設定し、生物資源について主権的権利を有すること、漁獲可能量(TAC)を定め生物資源の適切な保存・管理措置をとる義務を有し、また、当該水域における自国の漁獲能力を定め、漁獲可能量の余剰分については他国の漁獲を定めること」などの説明があった。我が国はこれに対応して関係制度の整備、漁獲可能量(TAC)の位置づけ、水産資源のマネ-ジメントの制度的整合性、余剰分を他国に認める余剰原則の検討、排他的経済水域の設定などが行われる。また、報告では外交関係に与える影響などについての説明もあった。
中央水産研究所からは、漁獲可能量(TAC)設定にともなう問題点を説明した。我が国は、新たに漁獲量を直接管理する方式を導入し、歴史的に大きな転換点に入ったこと、欧米各国はTAC制度を早くから導入し、例えば大西洋のハリバットのように終漁期を決める①オリンピック方式によって漁獲可能量(TAC)をコントロ-ルしたが、その結果、資源の回復はみられたものの資源先取り競争によって漁業が立ちゆかなくなったこと、その後、漁業管理制度は、試行錯誤を経て様々な管理方策がとられ、主要な方法として②漁業許可制や③漁業者集団に漁業権を与えて自主的に管理する方策、④漁獲枠を個々の割り振る個別割当制度(IQ制度)からさらに⑤譲渡可能漁獲割当制(ITQ制度)に移行している国もあることを制度の特徴や弱点を点検しながら説明した。3.経済調査情報の有効利用が課題
各機関・団体からの報告としては、統計情報部から漁獲可能量(TAC)との関連で遊魚採捕量調査及び漁業の新たな担い手という観点からの農林水産業新規就業者調査などの調査の計画、第10次漁業センサス研究会の発足などについて報告された。また、海外漁業協力財団からは、中小漁業者が海外事業を展開する場合の事前調査に対する助成や関係国への機材供与等の支援制度について、全国漁業協同組合連合会からは「漁業・漁村活性化構想(案)」についての説明が、大日本水産会から40%に達した外国人混乗の対策として「漁船混乗制度改善対策事業」の説明などがあった。
以上のように各機関が様々な水産経済調査を行っているが、これらの調査結果は行政、研究、団体の相互で必ずしも充分に活用されておらず、一部では相互に必要としながらも眠っている場合もみられる。このため、これら調査資源の有効活用を図るために報告書の文献デ-タベ-ス化を含めて有効利用を考える必要があると思われた(経営経済部長)