経営経済部は、水産業そのものを研究対象にしているので自然科学とは異なる形で二-ズやシ-ズが発生する。
まず、産業の経済政策を扱う国や自治体の行政部局からのニ-ズが大きな位置を占める。実際、我々の研究は行政
部局からの依頼で始まることが多い。さらに、経済学の目的が産業の活性化や社会的厚生を最大にすることである
から、先の行政部局からの要求とは別に、経済研究者の視点から研究の動機が生まれる点である。例えば、戦後期
の水産経済研究の視点は“漁村における貧困からの開放”といった社会正義感が発露した研究であった。このよう
な正義感や使命感は、各地の漁村を調査し多くの漁業者に接する中で整理され問題意識となっていくのである。こ
れらのことは、今も生きているしこれが研究のシ-ズに近いものかもしれない。
現在、水産経済研究に求められている主要研究ニ-ズとして、次の事項があげられる。第一に、漁業管理分野で
は、漁業者の資源先取り競争に終止符を打ち、利潤をあげるための漁業管理組織をどのような合意によって作るか
である。これには各国の漁業管理の比較や、我が国の各地の漁業管理事例を比較検討することによって、経済合理
的な仕組みを提案できると思われる。
第二に、消費流通分野では、さしずめ消費の動向やス-パ-・マ-ケットや外食産業での水産物取扱特性を把握
し、対応が遅れている産地市場・産地加工業の再編と流通革新をどのように進めていくかである。さらに、この流
通革新に漁業者はどのように対応すべきなのかが問題となる。
第三に、漁村経済の分野では、漁村と漁業経営の活性化を計るために、漁村の労働力の効果的な燃焼をねらい、
観光資源を含めあらゆる地域資源を有機的に結びつけて活性化方策を模索することである。
このことから、今年の経営経済分野の研究は、漁業管理分野では、内外の漁業管理手法を比較分析し、TAC制
度の元での有効な管理手法を検討する。漁村経済の分野では、許可漁業の経営を取り上げ、減船の効果や過剰投資
や過剰装備等についての経営点検を行い経営活性化方策を検討する。流通消費分野では、途上国での流通施設に対
する投資の評価の研究及び国内の消費地流通革新に対する産地の対応の研究を行う。
(経営経済部長)