利用加工部門の研究推進について

篠原 和毅・山澤 正勝

 利用加工分野は、海洋の有用な資源を探索し、新たな利用開発に向けた基礎的研究及び多様化する食生活の 動向を踏まえた健康的で、高品質の水産物を供給するための加工・流通技術に係る基礎的研究を担っている。
 これら研究の推進は、全国的視野からの研究ニ-ズ、シ-ズの探索及び連携・調整に基づいており、一つは産 学官の連携の下に毎年1回開催される水産利用加工研究推進全国会議において行っている。今年度は6月5~7日に 開催し、本会議においては重要検討課題「輸入水産物を巡る諸問題、-安全性と品質特性-」について各方面か ら話題提供をいただき、問題点を整理するとともに、今後新たな研究の推進に役立てていきたい。二つは、11月 に開催される水産物利用・加工関係民間研究所及び技術部門との懇談会(民間懇)であり、今年度からは技術研 究会が開催できるようになり、今後これを活用して幅広い分野からのニ-ズ、シ-ズの探索の場にしていきたい 。
 水産研究所・大学等間の連携、調整に関しては、国際農林水産研究センタ-水産部において、今年から中国と の間に淡水魚の利用に関するプロジェクト研究がスタ-トし、中央水産研究所も研究協力をしていく。また、食 品総合研究所、畜産試験場と当所利用加工部門とは、三場所研究連絡会を開催しており、今後プロジェクト研究 につなげるような研究ニ-ズの探索に努力していきたい。さらに、今年から東京水産大学と連携大学院の協定を 結び、新たな研究の展開が期待されている。
一方、国際的な情報については、ノルウエ-におけるFAO/WHO合同食品規格部会やワシントンDCでの水産物の検 査と品質管理に関する国際会議に出席し、水産食品の安全性・品質に関して、新しい衛生管理方式(HACCP )の概念を取り入れることが世界の潮流であることを目の当たりにしてきており、各国の取り組み状況や今後日 本においても多くの水産物についてHACCPへの対応を考慮せざるをえない状況にあることについて、いずれ この場をかりて報告したい。
以上に述べた研究のニ-ズ、シ-ズの探索及び新たな取り組み状況については、中央水研ニュ-スの紙面を通 じて、積極的に情報の発信につとめていきたい。
(利用化学部長・加工流通部長)