生物機能部の研究推進について

広瀬 慶二

 生物機能部は、全国的視野から海区水産研究所の資源の共通基盤的研究を推進する目的で、水産生物の 多様な発生、成長や適応等の生理・生態現象とそれを支配している情報物質の解明や有用水産資源の動態 解明に必要な系群や種判別のための生化学的手法の開発を進めている。そのためのニーズ・シーズの探索 は、今後水産研究官による全国的な探索の他、自らも各種の会議や学会活動を通して研究の動向を分析し 課題化に役立てる。
 現在、経常研究のほか特別研究(中回遊、種判別)、大型別枠(新需要創出)、一般別枠(健康機能) 、バイテク(動物ゲノム)の研究を行っている。これらの研究は大きく以下のように分けられる。

  1. 魚類の卵稚仔及び系群の生化学的判別法の開発:アイソザイム、mtDNA及び核DNAによる分析手法の開 発と確立。これらの研究は、海区水産研究所と水産 試験場の連携と協力で行われている。今までの研究 をさらに発展させ平成9年度からの特別研究 「仮称:多様性」への参画が予定されている。このような研 究を進めることにより、水産資源の基盤的研究をさらに強化していきたい。
  2. 魚介類の環境適応能の解析:水温、塩分や滲透圧の変化に対応して細胞及び 個体がどのように環境 に適応しているかを生理学的及び分子生物学的に調べ、水産生物の生理・生態現象を解明する。実験室の 細胞レベルの研究を資源生物であるサンマで実証するため、平成9年度からのプロ研一般別枠素材として 提示されている「仮称:太平洋沖合域」の候補課題に上げられている。この分野の研究が順調に進めば、 どのようにして生物が環境に適応しているかが解明され、新たな資源生物の生存の評価基準が提案される であろう。
  3. 水産生物の細胞培養系の開発:複雑な水産生物の生理・生態現象を解明する手だてとして、単純な実 験系即ち細胞レベルで機能解明するための手法の開発。これらは、地味な研究であるが魚介類の生存や行 動特性を解明する手段として欠くことのできない分野である。
 生物機能部のこのような研究は、他の水研、水試のほか大学との協力および情報の交換をしながら進め られている。多くの成果は、国内外での学会発表や学術雑誌に公表することにより情報の発信に務めるつ もりである。さらに、中央水研ニュースにも分かりやすく掲載されるように努めていきたい。
(生物機能部長)