生物生態部の研究推進の方向性について

渡辺 洋

 生物生態部では、国連海洋法条約批准に関連した生物学的許容漁獲量の算出や、資源管理目標の進化及び開 発、管理技術者の育成等のことを実施しあるいは実施することとなっており、これまでとは違った雰囲気の中 で部長を含めた12名のスタッフ体制で調査・研究目標に向かっている。
 平成8年度の生物生態部の研究推進体制としては、太平洋中区の試験研究機関との連携を基に、浮魚類の漁 海況事業をベースに、我が国周辺漁業資源調査における各水産試験場との共同調査、さらには伊勢・三河湾の 漁場生産力モデルで愛知及び三重県と、また水域環境・生態系調査で静岡及び千葉県と共同して調査・研究を 進めていくこととなっている。
 また水産研究所間の連携、調整については、平成7年度から始まった特定水域資源評価技術開発調査で2課 題及び平成8年度から3期目に入った農林水産系生態秩序の解明と最適制御に関する総合研究(バイオコスモ ス)で3課題を実施しており、共同研究の成果が期待されるところである。
 さらに、経常研究としては浮魚類の資源生物や、稚仔魚の変動生態あるいは統計学的手法による資源動態の 研究が行われることとなっている。
 上述したように、生物生態部では国連海洋法条約批准に伴う可能漁獲量(TAC)の設定に関連した業務を 実施することとなっており、マイワシ、マサバの生物学的許容漁獲量(ABC)の算出に加え、基礎的・基盤 的研究の担い手として資源管理目標の進化及び開発と、さらには全国水産試験場長会の要望に応え、資源の量 的把握技術等の資源管理技術者の養成システムの確立を図ることとなっている。つまり、これらの問題を契機 に中央水産研究所のあり方を考えつつ、各水産研究所及び中央ブロックのみならず各水産試験場と深い連携を 保ちながら、情報の発信を考慮しつつ、調査・研究を一緒に進めたいと考えている。

(生物生態部長)