本会議は中央水産研究所長の主催により平成7年5月25日、上田市に おいて、内水面関係都道府県水産試験場等43機関、水産庁(研究課、漁場 保全課、振興課)、養殖研究所、水産工学研究所、国際農林水産業研究セン ターからの出席者計86名の参加により開催された。
本会議は、平成元年の水産庁長官通達(平成6年一部改正)に基づき、 内水面地域において水産研究所と他の公立試験研究機関との情報交換を密に し、相互の連携強化を図り、水産業振興に寄与する研究を効率的に推進する ことを目的として開催されるものである。平成2年度から毎年開催され、今 回で6回目となった。
会議に先立ち、中央水産研究所長および水産庁研究課長から挨拶があ り、わが国の内水面水産業は生産額こそ小さいが、地域の特産品を産むとい う点で社会的意義が大きいこと、これからの内水面試験研究は水産業のみな らず、親水性レクリエーションや地球環境間題にも積極的に対応していくべ きことが強調された。
会議では、まず、関係試験研究機関から試験研究の進捗状況および計画 が報告された。水産試験場等については、北海道・東北、関東・甲信越、東 海・北陸、近畿・中国・四国および九州・沖縄の各地域の代表1機関からそ れぞれ報告が行われた。公立試験研究機関全体として、増養殖分野では「バ イテクによる養殖魚改良」、「魚病対策」、「種苗生産技術改良/開発」等 産業的要請の高い分野に、資源関係でも産業に直結する「資源の維持・増大 ・管理」とその基礎となる「資源生態解明」分野に、環境関係では「希少魚保 全」、「河川構造物/底質改良」等環境保全の観点から近年関心を集めている 分野にそれぞれ研究勢力の多くが割かれていることが指摘された。
中央水産研究所からは平成6年に設定された新研究基本計画に則って研 究を推進していること、資源分野では渓流棲息魚の資源量推定法等、環境分 野では環境酸性化の魚類に与える影響等、増殖分野では河川生物群集の多様 性維持機構の解明等の研究を進めていること等を報告した。
一方、養殖研究所からは遺伝、生理、栄養代謝等の共通基盤的分野の研 究を実施している状況、バイオコスモス等のプロジェクト研究の課題が多い こと等が報告された。また、水産工学研究所からは、内水面関連の課題はご く少数であるが、平成7年度から各種魚類の移動を可能にする魚道の研究に 向けて農業工学研究所、中央水産研究所と連携しつつ論議および基礎実験を 開始する計画である旨報告された。
次に、協議事項の議題において、中央水産研究所から同研究所と公立試
験研究機関との内水面関連の連携活動(研究協力の状況、研究結果・計画検
討のための会議開催状況、水産庁、農水省、建設省等の各種事業の検討委員
会への対応状況)を報告した。また、中央水産研究所と公立試験研究機関等
との内水面関連の連携を強化するとの観点から、本推進会議の運営細目を次
の事項について改正したことを報告し、了承された。
(1)会議の構成者を各機関の代表者とする。
(2)会議の運営は所長の指示に基づき事務局が行う。
(3)会議の円滑な推進を図るため幹事会を置く。
なお、本推進会議の部会については今後の検討課題とした。
翌5月26日、同じ会場において、本推進会議の関連シンポジウムと して「水質汚染と水産生物一内水面水質環境研究の新たな方向を探る一」を 開催した。河川湖沼の水質汚染は依然として深刻な問題であり、水産側が内 水面の水質汚染の原因となっている場面もあることから、このような状況に 対応するためこのテーマをとりあげた。推進会議の関係者88名が参加して、 この分野の試験研究の推進方向について意見交換を行った。
本推進会議の前身は、「内水面試験研究連絡会議」と言い、昭和47年 から平成元年までの18年間続いている。はじめの7年は淡水区水産研究所 の、あとの11年は東海区水産研究所の主催である。さらにその前身は、 「内水面水産研究懇話会」で、昭和44年から46年までの3年間淡水研の 主催で開催されている。残されている古い議事要録を読むと、当時の先輩方 が内水面試験研究のビジョンや国と県との連携方策について討議をされてい る。その熱気が感じられ、感動を覚えることがしばしばある。
このような先輩方に負けないよう、内水面の保全と利用の研究推進に努 力したいと思う。
(内水面利用部長)