ごくろうさま3代目蒼鷹丸・よろしく新蒼鷹丸

田辺 克


 9月から11月にかけて3代目蒼鷹丸の下関回航と新蒼鷹丸の受け取りが行われ、慌ただしい日々を過ごし た。この間の出来事は永く思い出として残るであろう。ここで、水研ニュースの紙面を借りて、記録として残 しておくのもあながち無駄ではないと思い、その時々の感想も交えて、日記風にまとめてみた。
9月2日 四半世紀にわたり活躍した3代目蒼鷹丸に元乗組員や乗船調査経験者、運航に係わった関係者など 約30名を招いて、真夏日のような太陽のもと、お別れパーティを催した。参加者一同と水研職員の惜別の中 、14時に横浜港を出航し、一路下関へと回航の途につく。

9月5日 下関三菱造船所に到着。これより10月19日までの予定で、直ちに新船の艤装が開始される。新 蒼鷹丸はほぼ出来上がりつつあったが、乗組員より細部にわたり改良点などを要求・提案した。その数は記録 に残っているだけで甲板部101ヵ所、機関部103ヵ所にのぼった。これらの要求・提案は造船所の協力の もとに取り入れられ、満足できる結果となった。ただ、乗組員側からすれば、ほぼ出来上がった時点ではなく 、進水時から各部の責任者を派遣して立ち会わせて貰えていれば、もっとスム-ズに事が運んだだろうとの思 いは残った。
この間に下記の検査や試運転が乗組員、造船所や各メ-カ-職員が乗船して行なわれた。
9月13日 蓋井島沖の響灘で海上予行運転
9月16日 同地点でジョイスティック調整運転
9月20~22日 同じく響灘で海上公式試運転
9月27~29日 別府湾で水中放射雑音計測運転
10月20日 完成検査。これより3代目蒼鷹丸から新蒼鷹丸への移設物の搬入、個人携帯品の引っ越しが始 まる。
10月24日 造船所工事担当者と新船艤装乗組員との竣工祝いが行われた。この下関滞在中は公私にわたり 、下関が定繋港である水産大学校の耕洋丸と天鷹丸、下関にドック中であった九州漁業事務所の白鴎丸、下関 に寄港した南西海区水研のしらふじ丸の皆様に色々とお世話になり、かつ旧交も暖めることができ感謝してい る。
10月28日 10時より水産庁から中央水研所長、漁政部船舶管理室長他、造船所側から造船所々長以下多 数参列のもと、新船の引渡式が執り行なわれた。10時30分造船所岸壁を離れ、一路横浜の母港に向かう。
10月30日 18時に横浜に到着、金沢木材埠頭沖に投錨、仮舶した。
10月31日 多数の中央水産研究所関係者の出迎えの中、10時に金沢木材埠頭中央水研専用岸壁に無事着 岸帰港した。
11月1日 測器協議会が開かれ、ドック滞在中より船側と中央水研生物生態部や海洋生産部等が中心になっ て話し合ってきた新船装備観測機器類の習熟航海が最終決定された。
11月9~26日 造船所側技師と機器メ-カ-の技術者および水研研究者が乗船、新船装備観測機器類の習 熟航海を行う。9~12日は中層トロ-ル、水中RV、計量魚探、13~14日はEPCS、SBEMS、1 8~20日は表層トロ-ル、稚魚ネット、LNP、ボンゴネット、リングネット、ニスキンボトル、21~2 4日はCTD、オクトパス、メモリ-CTD、曳航式CTD、モックネス、ADCP、XBT、25~26日 はセジメントトラップと盛り沢山な内容であった。水研研究者や船側と協議を重ねながら、具体的にテストを 繰り返し、機材や機器の改良も行った。これらの機器のうちの主要なものについては本号の別稿で浅野・木下 ・市川の各氏が解説しているので参照されたい。

 これらの間には、船内LANの取扱説明会、救命艇の降下訓練、作業艇の操作、船内用具・備品類の整備登 録、テスト機器類の積み降ろし等や各種事務手続きなどが行われた。このためドック後半より乗組員、特に各 部担当者には早朝から深夜まで懸命に頑張ってもらった。これに対し、造船所側担当者や各機器メ-カ-の技 術者も適切に対応して戴き、厚く御礼を申しあげたい。

11月15日 新船最大のイベントである竣工披露式のために、水研担当者と船側とで打ち合わせを行った後 、9時に横浜港を出航して12時に東京港晴海棧橋水産庁専用岸壁に着岸した。
11月16日 秋晴れに恵まれた中、午後1時から2時15分まで船内を公開。2時30分からは晴海船客タ -ミナル4階イベントホ-ルに席を移して、水産庁長官や次長などのVIPを含めて二百数十名の出席者を得 て、盛大に祝賀会が開かれた。この披露式が成功裡に終えることができたのは、水産庁研究課、漁政部船舶管 理室、照洋丸や水研関係者などの多大な御協力の賜物と感謝している。
11月17日 晴海棧橋を14時に出航。途中東京航路で、本船が披露式のため晴海棧橋滞在している間、有 明埠頭に転錨してもらっていた調査船照洋丸とすれちがい、汽笛とフラッグを掲げて挨拶を交わした。16時 30分横浜帰港。

この様な経緯で、無事新蒼鷹丸が誕生した。早速11月28日から10日間の調査航海が行われ、さらに1 2月7日には水研関係者の船内公開があり、そのあと中央水研の船舶職員と陸上職員の懇親会も開かれている 。
 今後ともこの最新鋭のハイテク船の能力を十分に発揮できるよう、乗組員一同、関係各位の御協力・御指導 を仰ぎながら努力して参りたい。

(蒼鷹丸船長)


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