研究室紹介

水産研究官


 水産研究官室は管理棟2階の2室で、ここからは水際線緑地(公園)を通してわずかに東京湾 をかいま見ることが出来る。
 当室は水産研究官のもとに、資源管理研究官、資源増殖研究官及び海洋環境研究官の3人の分 野別研究官がおり、総勢4名で構成されている。
 わが国の水産業をめぐる最近の情勢はめまぐるしく変化し、200海里体制の定着、公海漁業 規制の強化、地球規模の環境問題等により海外漁場は著しい制約を受けている。また、国内にお いては近海漁業資源の大部分が低水準にあり、その一方で水産物の輸入が増大している。水産業 に関連する科学技術についてもリモートセンシングやバイテク技術等の導入により目ざましい発 展をとげている。このように漁業をめぐる内外の情勢が大きく変化しつつある状況下で水産庁研 究所は、長期的視点に立って研究を推進する必要性が生じてきた。
 そこで、昭和63年水産研究所の研究体制の全般的な見直しが行われ、その一環として平成元 年5月、中央水研の組織の一部として水産研究官が設けられた。したがって水産研究官制度は発 足以来いまだ6年しか経過していない。
 水産研究官がすべき仕事は、水産庁長官通達「水産業関係試験研究の効率的推進について」に 示されている。この通達の趣旨は、近年の水産業をめぐる情勢の変化や科学技術の著しい発展に 対応して、水産業に関連した研究を効率的総合的に推進していくためには、水産庁研究所の連携 が特に重要である。そして研究の具体的連携・調整は中央水研所長が責任者になり行うものとし 、その事務局を水産研究官とする。そして連携・調整を円滑に推進するため、水産業関係試験研 究推進会議を開催するものとなっている。このように水産研究官は、長官通達にもとづいて水産 庁研究所間の有機的な連携の強化を図ることを目的に設けられた部署である。
 これまでの主たる成果としては毎年開催される水産業関係試験研究推進会議において、「行政 対応研究と基礎研究」(平成3年)、「地域における研究機関との連携の強化」(平成4年)、 「部・支所における人材育成」(平成5年)、「水産研究と国際対応」(平成6年)があり、こ れらのテーマについて意見交換を行い、水研間や行政側との意思の疎通を図っている。
 分野別にみると、資源管理部門では研究レビュー「資源研究の現状と問題点」の整理刊行、浮 魚類卵稚仔採集器具・方法の標準化の集約、マイワシ資源・研究に関する「マイワシ資源検討会 」の主催事務局担当等、調査・研究の総合化と効率的推進を図っている。
 次に資源増殖部門では3編のテーマ別研究のレビューと「増養殖分野における概括的研究のレ ビュー」の整理刊行、増殖関係生態調査標準化に関する分析、養殖専門誌「養殖」の「研究所ホ ットライン」の開設等水産庁研究所間の連携と調整を図っている。
海洋環境部門では、「プランクトン採集法標準化報告書」の刊行、水産海洋研究のレビューの 実施、海洋観測資料の一元化における問題点の抽出等を行い、水産庁研究所間にまたがる問題の 連携、調整を図っている。さらに政府間海洋学委員会(IOC)国内委員会、海洋生態系の地球 規模変動(GLOBEC)、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、全世界海洋情報サー ビスシステム(IGOSS)等の会議メンバーになり各水産研究所への情報伝達と連携の推進に 努めている。
 このように平成元年に新設された水産研究官室は9つの水産庁研究所および国際農林水産業研 究センター水産部間の研究の具体的内容に係わる事項について連携を強め、効率的な研究を推進 する手助けをする役割を担っている。
 漁業をめぐる情勢は、国連海洋法条約発効に伴う許容漁獲量の設定とか地球規模の環境問題へ の取り組み等ますます厳しさを増しつつあり、水産庁研究所の成果に対する期待も大きくなって いる。そのような状況のなかで、研究官室としても新たな視点に立って研究を効率よく推進して 行くために努力して行きたい。


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