中央水研ニュースNo.8(平成6年1月発行)掲載

【研究室紹介】
変動機構研究室(海洋生産部)
(その後の組織改正のため、現在この部署は存在しません)


 変動機構研究室では窒素、りん等の栄養塩類の 循環、餌料プランクトンの生産、マイワシ、マサ バ、カタクチイワシ等の卵稚仔の輸送、漁場形成 等に係わりのある海洋構造の動態と海流系の変動 機構に関する基礎的な研究を行なっている。同時 に太平洋中区の漁海況予測の精度を向上させるた めの海区対応の研究も行なっている。また近年、 温室効果ガスの増加に伴う気侯変動の予測に関す る調査研究が世界的に行なわれる様になり、当研 究室でも国際的な共同調査であるWOCE(世界 海洋循環実験)の一環として実施されている「海 洋大循環の実態と総合観測システムに関する国際 共同研究」(科学技術庁)に参加し北太平洋中層 循環に関する調査研究を実施してきた。これまで に黒潮続流の南側の亜熱帯海域への亜熱帯水の輸 送や中層貫入に関する新しい知見を得た。これら の成果はカツオやマグロの漁場予測手法や再生産 機構の解明等に役立つものと期待される。
 勝どきから横浜への庁舎移転に際して、旧庁舎 で使用していた衛星画像解析装置を一新し、人工 衛星データをリアルタイムに受信出来る人工衛星 受信施設及び画像解析装置を設置した。この施設 と装置により、これまで解析してきた水温情報の みでなく、本年打ち上げられる予定のSea Star 衛星による水色情報の取得も可能になり、広域的 な海洋現象から数10kmの渦の構造に至るまで把 握することが可能となるだけでなく、植物プラン クトンの分布範囲、密度など生物生産に関する情 報も取得出来る様になった。当研究室では平成5 年度から「北太平洋西部亜熱帯循環系に関する国 際共同研究」プロジェクトにおいて黒潮域から南 西諸島東方海域に至る海洋構造及び動植物プラン クトンの分布調査を開始した。この調査研究にお いて人工衛星の水色情報により広域的な植物プラ ンクトンの分布状況が把握出来れば、これまで知 見の少なかった本州南方の亜熱帯水域での生物生 産に関する基礎的な研究の推進に大いに役立つも のと期待される。
 平成6年秋には新蒼鷹丸が就航するが、これを 機会に観測機器も一新されることになった。変動 機構研究室ではこれらの新しい施設、装置、観測 船、海洋測器等を充分に活用して生物生産に係わ る海洋構造の動態と変動機構に関する共通基盤的 研究の推進、漁海況予測の精度向上ならびに国際 共同研究への貢献を目指していきたい。
参考写真:人工衛星データ受信・解析装置による日本周辺海域の海況の解析
nrifs-info@ml.affrc.go.jp
back中央水研ニュース No.8目次へ
top中央水研ホームページへ