中央水研ニュースNo.7(平成5年10月発行)掲載


新庁舎への移転完了に際して
吉田主基

 1省庁1機関地方分散の首相指示にもとづく昭 和63年7月の閣議決定で、中央水産研究所は62年 間住み馴れた東京都中央区勝どきの地を離れるこ ととなりました。以来今日までの5年間に、移転 候補地の選定、研究施設・宿舎・船舶関連施設・ 上田庁舎実験棟の設計及び建設に関連する予算要 求等々の困難な作業に当たり、多くの人々に支え られてきました。ご支援とご協力を頂いた水産庁、 農林水産技術会議事務局、建設省、大蔵省、神奈 川県、横浜市等の担当者の方々に心からお礼を申 し上げます。
 本号の表紙写真でご覧のように、今年6月に横 浜市金沢区福浦に完成した新庁舎は勝どき庁舎に 比べて敷地面積で1.7倍、建物延べ床面積では3.7 倍と広大なものとなりました。また、技術会議事 務局のご努力により今後の研究展開に欠かせない 研究機械の整備を図るための経費を別枠で確保す ることができました。この巨大な投資によって完 成した新庁舎において、施設・設備を活用しつつ 先端的かつ先導的な研究を展開することとなりま すが、国の期待にどのように応えていくのか、身 のひきしまる思いをいたしております。
 横浜新庁舎への引越し作業は主要部分について は7月19日に開始し、30日には無事終了すること ができました。62年目の引越しという大事業に向 けて、昨年6月には従来からの新水研建設委員会 を発展させて移転対策本部を設置し、連絡調整班、 引越し班、福利厚生班、セレモニー班、ソフト班、 ハード班、情報流通班の7班を置いて、円滑な実 行に向けて取り組んできました。これら7つの班 を中心とする作業に参画した所員全員のエネルギ ーと団結力とによって、困難な移転作業を無事完 了できたことに感謝しています。今後は研究室・ 実験室等の早急な態勢整備に努力し、業務の 遂行に支障をきたさないように努めてまいりたい と考えております。
 いくら立派な施設ができても、施設自体が仕事 をするのではありません。必ずや近い将来に新庁 舎の恵まれた研究環境をいかに活用しているかを 問われることになります。施設・設備を使いこな して研究を推進するのが私たちの役目であると心 に誓い、移転時のパワーを持続して、「開かれた 研究所」を実践することによって期待に応えて行 きたいと考えております。「開かれた研究所」の 運営が、今後の研究の活性化につながるキーワー ドであると私は信じております。国立試験研究機 関として「開かれた研究所」の理念は常識であり ますし、この実践を通して研究交流を活性化し、 研究水準の向上に資するとともに、産業界・行政 の要請と期待に応えて行くことができるし、そう しなければならないと思います。
 誰を対象として、どのように開かれた研究所で あるべきかを明瞭に意識し、実践を通して定着さ せて行く必要があります。移転を完了した今日、 「開かれた研究所」の運営に関して所員の意識も 向上しつつあるように感じておりますので、今後 は更に議論を深めて意識を高めながら実践に向け ての具体的なやり方を詰めて行くことになりま す。
 この新庁舎で、私たちは21世紀に向けての水産 研究の基礎を築くことを目指して努力して行くこ とを誓います。
(所長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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