中央水研ニュースNo.7(平成5年10月発行)掲載


漁業管理と漁村活性化の研究センターに
(その後の組織改正のため、現在この部署は存在しません)
多屋 勝雄

 経営経済部は昭和57年に資源部の水産経済研究 室として室長1人の体制で発足し、その後平成元 年の中央水研の発足により、3研究室体制の経営 経済部となって現在に至っている。
 新庁舎が完成し、人的にも水産経済関係のスタ ッフが整い、名実共に部としての組織的な活動が 出来るようになったことをご報告したい。これも ひとえに関係された皆様や諸先輩のおかげであ り、ここに紙上を借りて改めて感謝します。
 当部は実験系ではないが、新庁舎では実験室に 準じた特殊な機能を持つスペースを確保すること が出来た。勝ちどき庁舎時代は新設の部であるこ ともあって、寄り集まるようにして研究をしてい た。そのため机が狭く資料を十分広げられない、 資料を保管できない、研究会議を開くことが出来 ない等、研究空問が狭いための悩みがあった。新 庁舎では存分に資料を集め、存分に資料を広げ、 人に迷惑をかけずに意見を闘わせることが可能に なり、研究の機能的な・効率的な推進ができるよ うになった。
 当部の関連施設は、研究棟の6階の南側半分を 占め、研究室に続いて、大量の資料を保管し作業 の出来る「漁業情報資料室」、そしてパソコンや OHP、スライド投影機、TV等を使って漁業管 理や水産物需給動向、経営分析などをシミュレー ションする「漁業管理システム室」およびコンピ ユータ解析を行う「漁業経済解析室」がある。こ れらの使いこなしと充実が当面の苦心のしどころ である。
 この機会を借りて当部の研究の背景と研究内容 について簡単に紹介させて頂きたい。日本の漁業 就業者数は、昭和38年の63万人から平成3年には35 万人にまで減少した。戦後漁村や農村に潜在 的な失業者として滞留した労働力が、高度経済成 長期を経て都市に流出した結果として、現在の漁 村労働力は平均年齢が50歳を越えるところが多く なり、地域経済の発展や水産資源の有効利用を図 る上で問題となってきた。それらを解決するため に、漁業生産体制を新しく編成しなおし、労働力 構成の健全化を図り、漁村の活性化を図る必要が ある。
 このような背景のもとに当部の3研究室は次の ような課題に取り組んでいる。
漁業経営経済研究室:
漁村の活性化を図るため の経営・政策研究や漁業制度の研究をしている。 例えば、海洋性レクリエーションの研究では、伊 豆半島の各漁協のダイビング事業の取り組みが漁 業に渡船料と民宿、入海料収入をもたらし、漁村 の大きな副収入となっていることを明らかにして いる。また近年盛んなスポーツ・フィッシング(遊 漁)と漁業の調整や、資源管理型漁業を展開させ るための漁業制度の問題等を取り上げ分析してい る。
消費流通研究室:
我が国の水産物の市場は、国 際化の進展や消費者の生活スタイルの変化にとも なう水産物消費の変化、スーパーマーケットや外 食の増大等によってダイナミックに変化してい る。漁業者や加工業者もこれら市場の変化への対 応を迫られている。消費流通研究室はこれら水産 物の需給動向や価格動向を明らかにするための計 測手法の研究を行っている。例えばサケやマグロ の市場の特徴の分析、その需給と価格動向をシミ ュレーションする研究を行っている。
漁業管理研究室:
我が国水産業は資源の乱獲を 防ぎ、漁業経費を押さえ、資源を大切に使う資源 管理型漁業を推進している。研究のユ例をあげる と、沿岸のコミュニティーを基礎にした漁業者の 自主管理の研究、そして各国の漁業管理制度の研 究とりわけオーストラリアのミナミマグロの管理 やニュージーランドで実行されているITQ制度 (譲渡可能個別漁獲割当制度)の研究、小型サバ 漁獲の規制に関する問題をとりあげて研究してい る。
 今後これらの研究は政策提言や経営提言などを 通じて現実のものにし、社会に貢献する研究部に していくつもりです。
(経営経済部長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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