中央水研ニュースNo.7(平成5年10月発行)掲載


新たな水産物の利用・加工技術開発をめざして
(その後の組織改正のため、現在この部署は存在しません)
柴田 宣和

 加工流通部では、多様化し高級化する消費者の 食志向に合致し、同時に健康増進にも寄与する高 品質で安全な水産食品の供給に資するための基礎 的な研究を実施している。
 横浜新庁舎を設計するに当たり、これらの研究 作業を機能的に行えるように配慮した。すなわち、 旧庁舎には全く存在しなかった魚体処理室、精密 可変低温室、データ処理室、品質評価室、官能検 査室等を新たに設置した。また、従来は他の施設 と併用していたために狭苦しかった製造実験室、 低温作業室をそれぞれ独立した部屋として大量処 理に対応できる程度の空問を確保すると共に、食 品高圧処理装置などの先端技術に対応する研究を 行うための新しいタイプの機器も設置することが できた。
 この他にも、化学分析を行うために、分析の目 的や方法の違いによってそれぞれの同一機種を独 立した部屋に集合させた質量分析室、アミノ酸分 析室、クロマトグラフィー室、食品成分分析室、 調理加工実験室、蛍光測定室、有害成分分析室、 凍結乾燥室、粉体分析室などの精密分析のための 施設を備えた室を充実、拡大した。
 新庁舎に設置された水産食品の製造及び流通に 関する一連の実験施設の概略を紹介する。
(1)魚体処理室: 魚介類の解体作業のための専用 施設。魚洗機、魚体処理機などを配置。
(2)製造実験室: 先端的で大型の装置にも対応で きるようクレーンを装備した広く堅牢な施設。 食品高圧処理装置、マスコロイダー、遠赤外線 乾燥装置などを配置。
(3)低温作業室: 5~15℃の一定温度中での製造 実験施設。各種擂潰(らいかい)機などを配置。
(4)精密可変低温室: 原料保管、加工・流通中の 温度変化と品質の関連を研究するため-30~+ 60℃の温度が精密に管理できる施設。
(5)データ処理室: 精密可変低温室とオンラインで 接続され、温湿度などの記録を処理。
(6)品質評価室: 製造実験室等で製造された食品 の簡単な品質を分析・評価する施設。
(7)官能検査室: 製造実験室等で製造された食品 や食品素材の味・におい・色調・物性を人間の 感覚により評価する施設。
 以上のように、新設および拡充した施設を活用 して、社会環境の変化あるいは消費者ニーズを考 慮しながら、水産食品の加工・流通技術に食品高 圧処理装置等の新しい技術を導入し、さらにEPA, DHA、タウリン等の水産物のもつ健康性機 能については、非破壊測定法等の評価法の開発へ 貢献すべき基礎データをつくりあげ、水産物の加 工および流通面での研究を推進したいものと念じ ている。
 さらに、これらの施設の利活用を核として、科 学技術庁や農林水産技術会議事務局による研究交 流や研修の諸制度を活用し、研究交流を深めつつ、 研究の積極的な推進を図ることにも努めたいと考 えている。
(加工流通部長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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