中央水研ニュースNo.7(平成5年10月発行)掲載


船舶関連施設の完成にあたって
小池 利成

 昭和初期のロマンを感じる建築様式の黄銅色レ ンガの勝どき庁舎から、涼しげなグレーのタイル 張りの超近代的な横浜庁舎へ移転が完了した。金 沢バイオパークの一角に横浜市立大学医学部付属 病院と相対して偉容を誇る新庁舎の玄関前に初め て立ったとき、身震いとともにある種の畏怖をも 感じた。これが頭脳集団の働く建物であるという ことを思ったためなのだろうか。新庁舎には落ち 着いた調和の美が感じられ、清潔感にあふれる実 用的かつ機能的に工夫された世界一の水産研究所 であると思う。
 船長としては新庁舎よりも気に懸けていた船舶 陸上施設・岸壁も、庁舎に先駆けて3月末に完成 した。設計段階から要望書を提出し、関東地方建 設局の鈴木設計官を始めとする担当者の方々と何 回も図面を見ながら検討したので、特に感慨深い ものがある。船舶陸上施設は新庁舎から約3km 北の金沢区幸浦に建設されている。道路を挟んで 三菱金沢工場があるくらいの殺風景な中に、不釣 合いなほど立派な施設である。約3,000㎡の敷地 に鉄筋コンクリート平屋建て、外壁は新庁舎と同 じタイル張りで延べ床面積は1,227㎡である。内 部には倉庫、工作室、休憩室、図書閲覧室、図書 保管庫、シャワー室等を完備している。外部には、 危険物保管庫(別棟)、網洗い場、駐車場等を備え、 周辺環境に配慮して、休憩室前庭と外周には緑地 まで設けている。
 岸壁は陸上施設から300m程の金沢木材港の一 角に造られ、水産庁最大の漁業調査船開洋丸 (2,640トン)も接岸できるように、長さ120m、 幅15mと大きなものである。直径80cmの鋼管杭 102本によって支持されている頑丈なものだ。岸 壁の施設としては、陸電、水道、岸壁電話、フェ ンス等がある。
 新庁舎もこれらの船舶関連施設も先端的な建築 技術を駆使して建設されている。このような研究 施設を有効に活用し、今後中央水研は我が国の水 産試験研究において中核として指導的な役割を果 たしつつ産業、行政に貢献するとともに、基礎的 ・先導的な研究を発展させて世界に冠たる情報発 信基地の一つとなることを期待して止まない。こ の大事業に携わった方々全てに心から感謝し、素 晴らしい施設と環境のもとで我々船舶職員も今後 一層の努力を傾注する決意である。
(蒼鷹丸船長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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