中央水研ニュースNo.7(平成5年10月発行)掲載 |
上田庁舎新実験棟の完成にあたって
(その後の組織改正のため、現在この部署は存在しません) 橋本 康
内水面利用部は3研究室からなるが、そのうち 2研究室は長野県の上田庁舎に、1研究室は勝ど き庁舎に設置されていた。この度、勝どき庁舎の 横浜移転に伴い、漁場管理研究室の機能を上田庁 舎に移転することになり、それに必要な実験棟の 新築並びに既存庁舎(共同実験棟)の一部改築を 行った。予算は平成2年度及び3年度に渡り、総 額約5億円である。工事そのものは比較的順調に 進んだが、工事引渡しが行われたのは、平成4年 8月となった。これを受けて、平成5年2月5日 に研究棟披露式を行った。当日は天侯にも恵まれ、 水産庁長官(代理研究部長)、長野県農政部長(代 理園芸蚕糸課長)、上田市長その他漁業協同組合 関係者等約70名の出席を得て、盛会であった。地 元マスコミも、上田市に内水面水産業試験研究の 中核機関ができたという論調で、当日の模様を報 道した。最後に、5年4月1日をもって、漁場管 理研究室が上田庁舎に移転となり、内水面利用部 は名実共に上田庁舎に集中して業務を遂行する体 制が整った次第である。 新実験棟は生物実験棟と命名され、鉄筋コンク リート2階建ての総面積681㎡、飼育室、組織解 剖観察室、一般水質分析室、病理実験室、生理実 験室、標本作成室、漁場管理実験室、資料保管庫 等を含み、談話コーナーや標本展示コーナーもあ る。 飼育室は、266㎡あり、艀化用から実験魚の蓄養、 馴致(じゅんち)あるいは毒性試験に使用できる) 形や容積の異なったFRPまたはガラス水槽を配 置したので、従来より規模の大きな実験を高い精 度で行えるようになった。また、水温加熱装置に より、室温以上の温度に関して水温の調節が可能 になった。別に、多数の小型水槽を適宜置くこと ができるので、生態や行動の観察も容易になった。 一般水質分析室は、従来の化学実験室の3倍の 面積になり、オートアナライザー、原子吸光光度 計等各種分析機器を機能的に配置できるようにな り、各種の分析が能率的に行えるようになった。 生理・病理学的研究も、実験環境が整い、無菌室 を含む細胞培養関連設備の整備により関連研究も 可能になった。各室からの廃液も、別棟の特殊排 水処理施設で完全に各種水質基準を満たすように 処理される。 なお、組織解剖観察室は、会議室としての使用 も可能であり、今後は積極的に活用しつつ、他機 関との交流や普及活動に努めていきたい。 飼育室及び一般水質分析室の新設に伴い、既設 の共同実験棟の恒温水槽室等を図書室に、化学実 験室を漁場管理研究室に改造した。図書室では書 架をすべて移動式として、従来の図書室に収容し きれず、応接室にも置かれていた書籍も全部収め ることができた。なお、図書の配置については企 画調整部情報係の指導を受けた。 実験池の一部も改修して、8面の円形実験池と した。除塵機と沈砂池があり、自動給餌機も設置 したので、飼育管理が容易になり、大量の試験魚 を供給できるようになった。照明設備もあるので、 アユの照明時間調節による成熟統御等の実験も可 育旨になった。 内水面利用部の各研究室は、小規模ではあるが、 海区水産研究所の資源管理、海洋環境、資源増殖 の各部に対応する業務を担当している。内容が多 岐にわたるうえ、近年は酸性雨等地球環境問題、 希少生物の増養殖等自然環境保全に結び付く問題 への対応も求められるようになっている。限られ た人数で、多面的な対応をするには施設の充実が 不可欠であるが、今回の増改築は、それに応えて いただいたものであり、関係当局のご配慮に感謝 する次第である。今後は各研究員が研究業績を挙 げることはもちろんであるが、これに加えて単純 化してしまった河川生態系の復活など多様化の著 しい内水面水産試験研究への寄与を掲げて、「開 かれた研究所」を目指しての普及活動にも力を入 れていく所存である。 (内水面利用部長)
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