中央水研ニュースNo.6(平成5年3月発行)掲載


日中黒潮共同調査シンポジウムおよびワーキンググループ会議の報告
熊田 弘

 平成4年10月25日から11月2日まで青島におい て第2回日中黒潮共同調査研究シンポジウム及び 第7回日中黒潮共同研究ワーキンググループ会議 が開催された。日本からは平野敏行トキワ松学園 女子短期大学長を団長とするワーキンググループ のメンバー8名およびシンポジウム出席者16名計 24名が参加した。水産庁からは中央水研3名、南 西水研2名、西海水研2名の計7名が参加した。
 10月25日の深夜に北京に到着し、翌日午前中に 国家海洋局を表敬訪問、故宮の見学、国営の北京 ダック料理店での会食とあわただしい日程をこな した後、当日夕刻には会議が開催される青島市に 到着した。我々が出発した2日前に天皇の中国訪 問があり、その模様をテレビで見るとかなり寒い ような印象を受けたが北京は抜けるような青空で 気温も高く持参したコートは一度も使用しなかった。
 シンポジウムは10月27日から29日までの3日間 開催され、日本からは基調講演1編と論文20編、 中国からは基調講演1編と論文21編ならびに招待 講演3編の計46編の報告がなされた。基調講演を 除いた論文は物理・大気と化学・生物の2分科会 に分かれ、筆者は座長を受け持った関係で化学・ 生物分科会の報告のみを聞いたが、活発な議論が なされ討論を打ち切るのにとまどう場面もあり、 また休憩時間にも討論されるなど成功裡に終わっ たと感じた。中国側の報告も特に目新しいトピッ クスはなかったが栄養塩、プランクトン分布等に ついて基本的な知見を精力的に積み上げつつある 印象を受けた。
 10月30日午前中は第7回ワーキンググループ会 議が開催され、1992年度実施中の共同調査研究に ついて報告があり、調査研究は順調に進んでいる ことが確認された。また7年間の研究についても 基本的な部分は完了し、満足すべき成果が得られ たことを確認した。観測データの交換、海洋環境 アトラスの出版、シンポジウム論文集の出版、研 究者の相互交流等今後に残された事項については 期日を定め完了させることで合意がなされた。最 後に日中両国は日中黒潮共同調査研究の成果をふ まえ友好関係、協力関係をさらに発展させるべき であることに合意した。当日の午後は今後の共同 調査研究について双方の協力の内容、実施体制、 課題等について意見交換を行った。日本側からは ポスト黒潮の課題として予算要求をしている「北 太平洋西部亜熱帯環境系に関する国際共同調査研 究」(科学技術庁・海洋開発、地球科学促進費) について説明した。日本側の調査は南西諸島、台 湾東方の亜熱帯海域で実施されるが、中国側は従 来行ってきた東シナ海で共同研究を続けたい意向 があった。共同研究の具体的なつめは予算が決定 してからのことになるが、4年度末の研究交流で 中国側から関係者が釆日する機会もあり細部につ いては引続き検討していくこととなった。
 10月30日をもってシンポジウム、ワーキンググ ループ会議とも無事終了し、31日午前中あわただ しく青島市内見学をした後、上海に移動し11月2 日に帰国した。今回の中国訪問はスケジュールが きつくほとんどホテルにかんづめ状態で、北京、 青島、上海と大都市をまわっただけであったが、 商店には品物が豊富にあり、市民も生き生きとし ており、街の中も清潔であった。通訳に聞いた話 では2000年のオリンピックを北京で開催すべくマ ナーの向上につとめているとのことであった。
(海洋生産部長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
back中央水研ニュース No.6目次へ
top中央水研ホームページへ