中央水研ニュースNo.1(平成元年9月発行)掲載

【新水研究発足にあたっての各部の抱負】
生物生態部の研究展望
(その後の組織改正のため、現在この部署は存在しません)
木立 孝

 東海区水産研究所資源部はいわし類、さば類な ど多獲性浮魚資源の漁業生物学的研究や関連する 魚卵、仔稚魚、餌料生物の分布、生態に関する研 究を行ってきた。その結果、それら浮魚類の産卵 生態と総産卵量推定、成長、年齢、回遊、減耗な どの諸特性が明らかにされ、資源量の推定が可能 となった。しかし、資源の補充機構や変動機構に 関わる生態的基礎研究は必ずしも十分とはいえな かった。
 このため、中央水産研究所、生物生態部や関連 部と協力し、関係諸科学の成果を活かして、生物 の生理・生態に根ざした資源変動機構の解明と資 源量把握の精度向上のための基礎的な研究推進を 図ることとなった。
 従来の漁獲物の資料解析による資源量評価、漁 況予測などの手法に加えて、調査船調査の充実、 飼育実験による実験生態学的研究、生理、生化学 的研究、人工衛星の活用など関連する各部との共 同研究をさらに推進する。このことによって、系 群判別の新手法開発、未成魚を含む回遊経路の把 握、成長、成熟を年齢、親魚の年齢・質による産 卵数・卵質などに関する基盤的知見の蓄積が行わ れ、資源量推定、資源量変動機構、管理手法の新 しい展開が期待される。
 これら浮魚類の再生産関係で最も重要な発生初 期の生残りに関する総合的な取組みが強調されて いる。卵・仔稚魚の採集方法の改善、ハイテク利 用による直接観察法の開発、飼育実験による餌料、 物理、化学環境、食害、疾病などの要因解明と自 然へのフィードバックなどに関し、バイオコスモ ス計画による全水研の横継的研究体制カ整備され、 関連分野との連携が可能となり、初期生活史、初 期減耗の実態や機構の解明が飛躍的に進むものと 考えられる。
 これら諸課題の統計処理、解析やモデル化のた めの手法開発や、今後問題となる造成資源の効果 についての評価、資源管理型漁業のための管理手 法開発のために、ゲームの理論、動的計画法によ る新しい展開にも取組んでいく。
(生物生態部長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
back中央水研ニュース No.1目次へ
top中央水研ホームページへ